夏休みの終わりに
NAME CHANGE
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『え…コレ全部なん…?』
「…おー」
名前が驚くのも無理はない。インターハイから帰ってきてから暫くは何もする気になれなくて、ただ近所をブラブラしていただけだったから。俺はどちらかと言うとこういう面倒くさいものは早めに片付けてしまうのだが、今回はどうにもそんな気になれなかったし、宿題をやった所で何があるんやろう…なんてアホみたいな考えをして過ごしていた。しかし流石にマズいと思い、急に取り掛かったが想像以上の多さだった。アホの岸本は毎年こんなんなんか、とアイツの心情を理解出来たことによく分からないが心底腹が立った。
『分からん訳やないんやろ?私どれやったらええ?』
「…お前、解けるんか?」
『…た、ぶん……』
そうやった。名前は岸本と並ぶくらいの学力の持ち主だった。何で手伝うなんて言うたんやろう…。大学生になってもアホは変わらんらしい。
「やっぱええわ。自分で何とかする」
『そ、そう…?ほな私、応援したるわ!はい、それではまずこの問題からいってみよーか!』
名前の人差し指が開いてある問題集の【問4】を指している。鮮やかな青が今度はハッキリと目に止まる。
「色気づいとるのぉ、爪に色なんか塗って」
いつもみたいに揶揄って言ったつもりだった。そしたら『ええやろ〜』とふんぞり返るから。でも今日は違っていた。
『あ、これはその…広島に行けなかったから、応援の意味で……ね』
少し恥ずかしそうにしながら名前は手をギュッと握った。そうや、コイツは昔からこういう奴だった。本当に大事な時はあまり出しゃばらず、いつも静かに見守ってくれた。今回のインターハイもバイトと重なったとかで広島には来なかったが、本当は違うのかもしれないと思った。
「…応援してもろて一回戦敗けはなんや情けないなぁ」
『そんな事ないよ』
「…でも、まぁ良かったんや。アレで」
本当にそう思ったから言った。何の悔いも無いし、あの日を迎えるために決まっていたシナリオなのかもしれないと思っているくらいだから。
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