Have to say ...


次は少し前にオープンしたと噂には聞いていたものの、中々来れていなかったカフェだ。なんでもメニューに珈琲しか無いらしく、かなりこだわりの強いお店だ。珈琲好きならば行かずにはいられない。今日、美容院が終わったら行くとずっと決めていたお店へ、いざ!!

そのお店は美容院からは少し遠かったが歩けない事もない距離にある。楽しみに向かって歩く時は疲れない気がする。毎日電車を降りて会社に向かう時は嘘みたいに脚が重いのに…。と、またしても仕事の事を考えてしまう自分が嫌いだ。

そして、私の脚が止まる。ここが私のずっと行きたかったお店…!ドキドキしながらドアを開けると、珈琲の良い香りが漂ってきた。「お好きな席にどうぞ〜」と鳥の囀るような綺麗な声が聞こえてきた。席はカウンターのみで、私は一番奥の端を選んだ。内装もインテリアもこだわりがありそうだ。一体どんな珈琲が飲めるのだろう…とドキドキしていると、目の前にスッとメニューが出された。


『あ…ありがとうございます』


小さく言いながらメニューを受け取り、店員さんの方を見上げる。


「ふふっ…よう会いますねぇ、僕ら」

『えっ?!あっ…!』

「お決まりになったら声掛けて下さいね。髪型、よう似合うてますねぇ」


なんと店員さんがさっきの彼だったのだ。待って待って…こんな事ってある…?たくさんあるカフェの中でよりによってここ…?え、これってもしかして夢…?

とにかく動揺を隠せない。落ち着け。確実に私の方が年上なんだから…。それにもう注文する物は決まってるでしょう…?

フゥ…と小さく息を吐き、私は手を少し挙げて声を出す。


『すみません、注文お願いします』


うん。声は震えてないよね?大丈夫。


「はぁい」


可愛らしいお返事とともに彼がまた来た。髪、少し切ったのかな。サラサラしていて綺麗だなぁ…。




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