Have to say ...
翌日
目覚ましに起こされず、自然に目が覚めたのは9時で、よたよたと起き上がって支度を始めた。会社にはしていけないラメが強めのアイシャドウと発色が鮮やかなリップをつけた自分の顔を久しぶりに見た。
あ…なんか歳取ったかも…。
なんて思いながら、着ていく服を選ぶ。迷いに迷って白Tシャツに北欧柄のグリーンのワイドパンツを合わせ、スポーツメーカーのソールがゴツめのサンダルを選んだ。いつもと違う装いで開けるドアは何だか軽くて、夏の強い日差しもまた爽やかになってしまうのだから不思議だ。いつもの駅、いつもの電車、いつもの景色のはずなのに、今日の世界は美しい。あぁ、今日の為に生きているのかもしれない。そう思うと心が穏やかさを取り戻していった。
電車を降りて時計を確認すると、11時だった。美容院の予約は11時半で少し時間があるため、私は本屋さんで時間を潰すことにした。
本屋さんに来るのも随分久しぶりな気がする。今日は活字じゃなくて、写真が良いな…と思いながらフラフラと行き着いたのは、〝お菓子とパン〟のコーナーだった。最初に目を惹かれたのは和菓子の本だった。練りきりや琥珀糖の綺麗な写真がたくさん載っている。食べ物なのに、視覚的にも人に喜びを与えるだなんて素敵過ぎる。私のやっている仕事は、誰かをこんな風に喜ばす事が出来ているのだろうか。
おっと…また仕事の事を考えてしまった。相当やられてるな、私…。
そう思いながら和菓子の本を棚に戻した。そして次に目に止まったのは珈琲の写真集だった。珈琲と色々な風景の写真が載っていてとてもお洒落だった。こんな世界もあるのか…と思いつつ、そのコーナーの本を手に取っては中を少し見ていた。
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