歩き出した日(南 ver.)
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『実は、この前南さんに頂いた珍しい薬草を使って薬を作ってみたんです。それを届けに来ました』
私は鞄から小さな瓶を取り出し、南さんに差し出した。
「…綺麗な色やな」
『そうなんです。色付けしなくてもこんなに綺麗な色になって』
その液体はエメラルドグリーンのような明るい緑色をしている。天然でこんなにも綺麗な色が出る物はそう無い。
『この薬に私の気持ちを込めました』
「気持ち…?」
『飲んでみて下さい』
そう言うと、南さんの表情が真剣になった。そして少しだけ薬を見た後、ゆっくりと蓋を開け、一気に口に流し込んだ。
ゴクンッと音を鳴らして揺れる喉仏が色っぽくて何だか恥ずかしくなってしまう。
「飲んだで」
『ふふっ…その薬には私とずっと一緒にいなければならなくなる魔法を掛けたんですよ』
そう言うと、南さんは少しため息を吐いた。あれ?伝わらなかったかな…。
「そんなんせんでも、俺はずっと一緒におるつもりやってんけど」
『えっ…!そ、そうでしたか…』
しまった…。これは寧ろ失礼になっているのでは…?ど、どうしよう…気持ちを伝えたつもりが逆効果に…。
ぐるぐると考えていると、南さんが私の手を引き、そのまま腕の中に包まれた。
「こんな小細工せんでも、俺の気持ちはもう変われへんで」
『ご、ごめんなさい…。あの…私も南さんといたいっていう事を伝えたかっただけなんです…』
「…そーか。めっちゃ嬉しいわ」
『…はい!』
嬉しくて恥ずかしくて思い切り南さんに抱きついた。これでもかという程、ギューッとした。すると突然、南さんの息が上がり始めた。あれ?強くし過ぎたかな…?
顔を上げると、見えたのは息が荒く、頬を紅潮させ、まさに発情している雄の顔をした南さんだった。ま、まさかさっきの薬が…?
「…っ…ハァ……ホンマ…こんなんせんでも…ええっちゅーねん…」
『えっ…ち、違います!そんな効果が出るなんて…い、意図的にしてないです!何か間違えちゃったかもしれません…!ど、どうしましょう…』
「どうしましょうって……そんなん一つしか無いやろ?」
すると南さんは私をそのまま軽々と担ぎ上げ、店の奥に向かって歩き始めた。
『えっ…ちょ…南さぁん…!』
「…覚悟しときや」
いきなりこんな失敗から始まるだなんて、何だか先が思いやられる。それでも二人でなら、乗り越えて行ける気がする。
その後、南さんの家にあった図鑑にその薬草が載っていて「媚薬効果あり」とハッキリ記載されていた。南さんは、飲ませたのが自分で良かったと笑ってくれた。
私の持っている図鑑に載っていたその薬草の効果は「幸福をもたらす」だった。こんな私だけど、どうかいつまでも隣りにいてね。南さんが私にくれた幸せを、いつまでも大切にしていきたい。
それが、薬に込めた願い。
おわり