Another Story:ホクホク甘い
NAME CHANGE
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日曜日
南と名前は板倉の家に向かっていた。道中、終始名前はニヤニヤしっ放しだった。
「そない嬉しいか?」
『嬉しいよー。久しぶりやもん。南くんは?嬉しい?』
少し覗き込むように南を見上げる名前が可愛くて、南は思わず頬を染める。
「今のは、あざといわ」
『あっ…バレたか。ほな、何で頬っぺた赤いん?』
「……わざとや」
『えー、何やそれ』
相変わらず、テンポの良い会話が弾み、流れてゆく。二人はこんな些細なことでも、幸せだった。
板倉の家に着くと、既に芋を焼いているようだった。岸本が気付き、手を振った。
「おー!南!番長!えらい重役出勤やなぁ。もう焼けるでー!」
「番長ちゃーん!!」
『岸本くんと土屋くんも来とったんや』
「あ、これもうええわ。ほれ番長、焼き立て食べや」
岸本は新聞紙に焼き芋を包み、名前に手渡した。名前がそれを受け取ろうとすると、南がスッと取った。
「あ!横取りすんなや!どんだけ食いたかったんや」
「ちゃうわ!名字さんは熱いの持たれへんねん」
「は?何?どういうこと?」
『私、手の皮が薄いみたいで他の人が持てるくらいの熱い物も持たれへんねん。ちなみに舌も猫舌やし』
名前は少し申し訳なさそうに言った。それを聞いた岸本は少しつまらなそうにしている。
「何やそれ。イチャつくなや」
「イチャついてへん。しゃーないやろ。持たれへんねやから」
「皿持ってきました」
板倉が持ってきた皿の上で南は焼き芋を半分に割る。ホカホカと湯気が立ち、甘い香りが漂う。
『めっちゃええニオイ〜!でもこんなん熱くて当分食べられへんなぁ』
「もっと早く焼いておけば良かったですね。すんません」
『あっ、いや、そんな!謝らんといて下さい』
名前に声を掛けられ、板倉はデレデレしながら話している。南はまたカチンときたようで、二人の間に割って入る。
「板倉、お前近いねん」
「す、すんません。あの…今日は南さんの為に焼き芋やろう思ったんです」
「俺の為?」
「南さん、番長さんがおらん間、元気無くてホンマに心配しとったんです。でも無事に番長さんが帰って来て、南さんがようやく笑うようになったの見てホンマに良かった思うんです」
これもまた予想外の言葉で、南の調子は狂う。そして、てっきり名前と話したいが為だと思っていたことが急に恥ずかしくなった。
南が何も言えずにいると、名前が話し始めた。
『板倉さん、南くんのこと思ってくれてありがとうございます。嬉しいです!』
その言葉に、その声に、その柔らかい笑顔に、南の胸はギューッと締め付けられた。名前のことが本当に好きで、一生大切にしていこうと思った。
「ほれ!次のん焼けたで!」
「南くん、僕も猫手猫舌やから半分に割ってやぁ!何ならフーフーもしてええで?」
「何で俺がせなアカンねん。俺がすんのはなぁ…」
南は名前の肩を抱き、引き寄せた。
「名字さんだけや」
名前は驚き、途端に頬が染まる。
「ホクホクで甘くて、二人は焼き芋みたいやなぁ」
「土屋、たまには上手いこと言うやん」
「早よ!次焼けたんやけど!!」
「あっ!皿出します!」
秋晴れの空が高い。
今日も大阪は、賑やかだ。
おわり
あとがき→
南と名前は板倉の家に向かっていた。道中、終始名前はニヤニヤしっ放しだった。
「そない嬉しいか?」
『嬉しいよー。久しぶりやもん。南くんは?嬉しい?』
少し覗き込むように南を見上げる名前が可愛くて、南は思わず頬を染める。
「今のは、あざといわ」
『あっ…バレたか。ほな、何で頬っぺた赤いん?』
「……わざとや」
『えー、何やそれ』
相変わらず、テンポの良い会話が弾み、流れてゆく。二人はこんな些細なことでも、幸せだった。
板倉の家に着くと、既に芋を焼いているようだった。岸本が気付き、手を振った。
「おー!南!番長!えらい重役出勤やなぁ。もう焼けるでー!」
「番長ちゃーん!!」
『岸本くんと土屋くんも来とったんや』
「あ、これもうええわ。ほれ番長、焼き立て食べや」
岸本は新聞紙に焼き芋を包み、名前に手渡した。名前がそれを受け取ろうとすると、南がスッと取った。
「あ!横取りすんなや!どんだけ食いたかったんや」
「ちゃうわ!名字さんは熱いの持たれへんねん」
「は?何?どういうこと?」
『私、手の皮が薄いみたいで他の人が持てるくらいの熱い物も持たれへんねん。ちなみに舌も猫舌やし』
名前は少し申し訳なさそうに言った。それを聞いた岸本は少しつまらなそうにしている。
「何やそれ。イチャつくなや」
「イチャついてへん。しゃーないやろ。持たれへんねやから」
「皿持ってきました」
板倉が持ってきた皿の上で南は焼き芋を半分に割る。ホカホカと湯気が立ち、甘い香りが漂う。
『めっちゃええニオイ〜!でもこんなん熱くて当分食べられへんなぁ』
「もっと早く焼いておけば良かったですね。すんません」
『あっ、いや、そんな!謝らんといて下さい』
名前に声を掛けられ、板倉はデレデレしながら話している。南はまたカチンときたようで、二人の間に割って入る。
「板倉、お前近いねん」
「す、すんません。あの…今日は南さんの為に焼き芋やろう思ったんです」
「俺の為?」
「南さん、番長さんがおらん間、元気無くてホンマに心配しとったんです。でも無事に番長さんが帰って来て、南さんがようやく笑うようになったの見てホンマに良かった思うんです」
これもまた予想外の言葉で、南の調子は狂う。そして、てっきり名前と話したいが為だと思っていたことが急に恥ずかしくなった。
南が何も言えずにいると、名前が話し始めた。
『板倉さん、南くんのこと思ってくれてありがとうございます。嬉しいです!』
その言葉に、その声に、その柔らかい笑顔に、南の胸はギューッと締め付けられた。名前のことが本当に好きで、一生大切にしていこうと思った。
「ほれ!次のん焼けたで!」
「南くん、僕も猫手猫舌やから半分に割ってやぁ!何ならフーフーもしてええで?」
「何で俺がせなアカンねん。俺がすんのはなぁ…」
南は名前の肩を抱き、引き寄せた。
「名字さんだけや」
名前は驚き、途端に頬が染まる。
「ホクホクで甘くて、二人は焼き芋みたいやなぁ」
「土屋、たまには上手いこと言うやん」
「早よ!次焼けたんやけど!!」
「あっ!皿出します!」
秋晴れの空が高い。
今日も大阪は、賑やかだ。
おわり
あとがき→