会場内は、国体とはまた違う雰囲気に包まれていた。インターハイも見てみたかったな、と思った。


試合が始まると、すぐに分かった。


南くんが謝りたいのは、あの人なんだと。




試合が終わり、翔陽高校のメンバーがロッカールームから出てきたところに南くんが駆け寄った。相手の方も気付いたようで、南くんを見るとかなり驚いていた。


「あれ？豊玉の…南、だよな？」


周りの選手たちも去年のインターハイのことを知っているためか、空気が凍りつく。


南くんは彼にきちんと謝り、高校生のうちにもう一度勝負したかったと素直に伝えた。


「もしかしてずっと気にしてたのか？あれはワザトじゃないと俺は思ってたんだけどな…。お前の勝つことへの執念は尊敬してたくらいだ」


この言葉に南くんは安心したようだった。私は、さっきと同じように深々と頭を下げた。


「あ、もしかして噂の奥さん？」


この人も知っているのか…。神奈川ってそんなに狭かったっけ…？


『あの…ホンマにありがとうございました。試合頑張って下さい』


そう言うと、王子様のような笑顔で手を振ってくれた。







.