なかなか悪くない日々
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「藤真、最近何か良い事でもあったのか?」
部室で着替えをしていると、長谷川がぽつりと呟いた。横に立つ花形も何だか全てを悟ってます、みたいな顔で黙々と着替えている。
「あー、察知されちまうようじゃ俺もまだまだだなぁ」
少しオーバーぎみに言ったが、二人はそれ以上聞いてこなかったし、そのままいつものように体育館に向かった。何だよ、俺がかっこ悪いみたいじゃねーかよ…。
部活以外の学校なんて別に何かを求めてはいなかった。部活が始まるまでの授業やらホームルームやら全校集会やらは時間が過ぎるのが長くて、この時間をバスケに充てたいと何度も思った。
でも最近、悪くないと思える時間が出来た。それは名字の存在だ。
席替えをすると大抵、俺の隣りになった女はピーピー煩い、めちゃくちゃ見てくる、緊張し過ぎて固まってしまうのどれかだ。ところが、今回隣りになった名字はそれのどれでも無かった。何やらいつもスマホと睨めっこしていて、俺には興味が無いと言わんばかりだ。
俺が望んでいたのはこういう日常だったはずなのに、席替えという学生の一大イベントを全く気にもしない程夢中になっている物が逆に何なのか気になって仕方なかった。
「なぁ、ソレ、いっつも何見てんの?」
『……』
「おーい、名字〜。無視は良くないぞー」
『えっ?!わ、私…?!ご、ごめんっ!無視した訳じゃ……』
名字はめちゃくちゃ慌ててそう言った。あまりにも予想外のリアクションで思わず吹き出してしまう。
「ブッ…!何だよ、そんなに慌てなくても良いだろ?んで、何をそんなに熱心に見てんだよ」
『えっ…いや……まぁ……調べ物を少々…』
「何調べてんだよ。俺が教えてやるよ」
『ふ、藤真くんには…たぶん分からないと思う…』
「ハァ?!何だよソレ。俺そんなに馬鹿じゃねーぞ?」
そう言われてしまうと、名字が一体何を調べているのか気になって仕方なかった。
それから、隙を見ては名字が何を調べているのかを覗こうとした。しかし、手の中にあるスマホの画面を見るのはなかなか難しい。覗こうとしている事に気が付くと、名字は物凄く素早くスマホを隠し、めちゃくちゃ嫌そうに俺を睨んだ。俺をそんな目で見てくる女は初めてだった。
何だよ、おもしれーじゃん。
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