空に君を想う


戻ってからはバタバタと仕事をこなした。そしてあっという間に夕方になっていて、一息つこうと店舗が入るテナントの非常階段に出た。最近ハマっているジャスミンティーを飲みながら、ぼんやりと空を眺める。ちょうど陽が落ちていくところで、珍しく夕焼けになっていた。〝オレンジ〟と表現するのは勿体無い、深くて切ない色をしている。何だか自分の気持ちを表しているような気がして、少しだけ目頭が熱くなった。

メソメソするのは性に合わない。こんな気持ちになるのは、やっぱり木暮さんの事が好きだからだ。それなら、この深い愛を伝えなければ。

そう思い、私は携帯で夕焼けの写真を撮り、木暮さんに送る事にした。


〝夕焼けがキレイだよ〟


そう打ち込み、写真を添付して送ろうとした時、木暮さんからメッセージが届いたのだ。受信音と共にメッセージと写真が画面に表示される。

送られてきた写真は私がさっき本社を出た時に見たビルの隙間から見える空の写真だった。そして、メッセージは〝夕焼けがキレイだよ〟だった。私が送ろうとしていたものと一字一句同じで、思わず笑ってしまう。


木暮さんも、私を想って空を見上げてくれたんだよね?


嬉し過ぎてもう黙っていられそうにない。


送信ボタンを止めて、通話ボタンを押す。


『あ、もしもし?写真ありがとう。今、私もね──』


空に君を想う。




おわり


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