指先から愛される
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大の指が私の指をなぞる。付け根から先端まで形を確かめるようにゆっくりと這っていく。そのまま指の腹同士をグリグリと押し付け、他の指も触れるか触れないかのタッチで包み込んでくる。
何だか変な気分になってきて、思わず身体がビクリと反応してしまう。暗いとは言えこんなにも周りに人がいるというのに、指を犯されているみたいでゾクゾクと快感が押し寄せてくる。
そのままスライドショーが終わるまで、大は私の指をなぞり続けた。そして、照明が点灯するとパッと手が離れた。
「全然変わってねーな。安心したよ」
ニッと歯を見せる笑顔もやっぱり変わっていなくて、胸がギュッと締め付けられた。
「合鴨、懐かしいな。ほら、食べるんだろ?」
大はトングで合鴨のローストを二切れ取り、私のお皿に乗せた。
『ありがと。大と食べた事思い出して取ろうとしてたの…』
「ハハ…俺も同じ。やっぱ忘れられねぇよな。一年くらいじゃ。んじゃ、席戻るな」
歩き出す背中を見て、飛び付きたい衝動に駆られる。待って。違うの。本当はあの時、私…。
『ま、待って!!』
つい声を出してしまい、自分でも驚く。大は歩くのをピタリと止めた。
ごめんね、大。
ワガママな私をどうか許して…。
『…もう少し、話したい』
勇気を振り絞って言うと、大がゆっくりとこちらを振り返った。私の考えている事なんて全てお見通しと言わんばかりに微笑みながら。
「良かった。俺も話したかったから」
犯された指先にまだじんわりと熱が残っている。
もしかしたら、毒を盛られたのかもしれない。
もう大から離れられない、強い毒を。
それが、愛ってやつなのだろうか。
もう良いの。
全部、奪って。
周りの視線に構う事なく、私たちは抱き締め合って泣いた。
おわり
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