指先から愛される
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貸し切った小さなダイニングは照明が柔らかいオレンジ色で、BGMのピアノの音色が心地良いお洒落なお店だった。店に着くとすぐに仲の良い友だちに見つけられ、懐かしさに身を委ねる。大はいるのか気になるけれど、あまりキョロキョロして周りに悟られるのが何となく嫌で、そのまま昔話に華を咲かせた。
ファーストドリンクのグラスを持ち、幹事の音頭で乾杯をする。食事はブュッフェ形式で、立ち上がったり座ったりと何だか落ち着かなかった。一通り落ち着いた所でようやく私も食べ物を取りに立ち上がった。ふと目に付いたのは合鴨のローストで、大とクリスマスに食べた事を思い出す。毎年チキンだから、たまには違う鶏を食べようとジビエ料理の店に頼んでテイクアウトしたんだっけ…。一つ取ろうとトングに手を伸ばすと、誰かの手が伸びて来て手を引く。
『あ…すみません。お先にど…』
〝どうぞ〟が最後まで言えなかった。だって、隣りに立っていたのが大だったから。一年くらいじゃあまり見た目は変わっていなくて、相変わらずの爽やか青年だった。
「…久しぶり、椿」
私の名前を呼ぶ声も変わっていない。しまい込んでいた何かが急に解放されて、涙になって溢れ出てきた。
「げっ…!!おま…泣くなよっ…!!」
『…っ…ごめ……違…の…』
自分が思っている以上に、私は大に会いたかったんだと気付いた。感情をコントロール出来ないくらい、やっぱり好きだったんだなぁなんて冷静な自分もいたりして不思議だった。すると突然会場の照明が落ち、スクリーンが映し出される。
「ではここで、思い出の写真スライドショーを流します!今だけは日々の色んな事を忘れて、学生に戻った気持ちで過ごして欲しいでーす!」
幹事の合図で懐かしい写真が映し出される。でも今は写真を懐かしむ余裕なんて無い。大を見上げると、ジッとスクリーンを見ていた。
気持ちがまだあるのは私だけなのかなぁ…。そう思い、目を伏せた途端、大が私の手を握った。驚いて再び見上げるが、大の視線はスクリーンに向けられたままだ。
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