青い春を渡る
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縁側は宴会をしている部屋から少し離れていて、声は聞こえるものの綺麗な庭と晴れた空が綺麗だった。エリザベータを見ると、まだ怒りが収まらないのか黙ったままだった。
「僕はボインの姉ちゃんにデレデレなんてしてへんで?彼女一筋や」
そう言うと、エリザベータは安心したように表情を緩めた。
『彼女ってどんな人?』
「んー…ボインでは無いな」
『ふふっ。そっかぁ』
エリザベータはそれ以上深く聞いて来なかった。そういう所は自分とよく似ていると思った。
「最高の環境でバスケが出来て幸せやで。親にも、応援してくれる可愛い従姉妹にも感謝せなアカンなぁ」
すると、僕とは違って大きくてまんまるな目がこちらを見た。空の光が反射して、キラキラと輝いていた。
『今度さ、東京の大学のオープンキャンパスがあんねんやんか。その後、東京案内して欲しいねん』
夢と希望が身体いっぱいに詰まっているような、溢れるエネルギーを留めておけないような、そんなエリザベータを見ていると、高校生ってええもんやなぁなんて思った。あの頃の僕もこんな風だったのだろうか。
「ええで。ばっちりオモテナシするわ」
『ホンマに?!やったー!!』
さっきまでの怒りはもう無くなっていて、こういう切り替えの早さもたった一年ちょっとで薄れてしまった気がした。
『大人になるってよう分からんけどさ、あっちゃん見とったら悪ないのかなぁって思う』
「そーか」
その気持ちはよく分かる。高校生が終わったら一気に大人にならなければいけない気になった。我慢とか遠慮とか、あの頃出来なかった事もいつの間にか出来るようになってしまっていた。
その間にいるエリザベータは、まだ青い春の中にいたいような、飛び出したいような、そんな気持ちなのだろう。
『あっちゃん』
「んー?」
『私の世界を広げてくれたのはいつもあっちゃんやった。色んな遊びや悪戯、言葉、秘密…。いつも私の手を引いてくれたね。さっき久しぶりに手繋いだけどさ、小さい時からなぁんも変わってへんなって思った』
真剣に話すエリザベータの横顔は綺麗で、僕が同じ歳の頃よりよっぽど大人だと思った。
「ほな、東京でも手繋いで歩こか?」
『え…流石に彼女さんに怒られんで』
「ふふ…大丈夫やって。彼女なんておれへんもん」
『え…大人怖っ…』
こんな僕でも誰かの笑顔を生み出せていた事が嬉しくて、たまに帰って来るのも悪くないと思った。
今度は、君が見つけた僕の知らない世界を僕にも見せて欲しい。
その時はちゃんと手を引いて歩いてな。
おわり
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