ピオニーが香る
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「まぁ、俺も今朝の天気予報で気付いてんけどな」
『何で天気予報で?』
「この花が映っとってん。覚えとらんか?お前がブーケにしたやつ」
『…あー!五月の薔薇!!』
烈が差し出した花はピオニーといって、五月の花嫁だった私が結婚式のブーケに選んだ花だった。初夏に咲き、その美しさから五月の薔薇と呼ばれるそうだ。
結婚式を五月にしたのは、ジューンブライドがベタで嫌だったから。そんな可愛げの無い五月の花嫁に、薔薇じゃないのに薔薇の異名を持つこの美しい花がピッタリだと思い、ブーケに選んだ。
こんな可愛げも素直さも持っていない私の言動を、烈はいつも面白そうに「そーか」と優しく見守ってくれる。
この人となら、自分らしくいられる。
そう思って結婚を決めた。
そっか…。あれから一年経ったんだ…。
『一年だから一本なの?』
「そうやで」
『こんなキザな事、出来るんだね』
「キザでも何でも、ウメが喜んでくれたらそれでええねん。ホンマは先に帰って脅かそう思っとったのに」
結婚記念日だからなのか、烈はいつもよりよく喋った。聞こえてしまうのではないかと思うくらい、私の胸がドキドキと鼓動を打つ。
「毎年増やしたるから。持たれへんようになるくらい、一緒におってや」
その柔らかい微笑みと、囁くような甘い声に溶けてしまいそうになる。
たまには言葉にするのも良いのかもしれない。そう思った途端、私の口から愛が溢れ出す。
『烈、ありがと』
そして今度は甘い香りに誘われるように、私たちの唇はゆっくりと重なり合った。
心にピオニーが香った気がした。
おわり
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