ピオニーが香る
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朝起きて顔を洗い、忘れない内にサプリを口に放り込み、卵とパンを焼く。今日はハムが無いからバタートーストでいいや。
お皿を出す頃には、烈もようやく起きて来る。同じ目覚ましで起きているはずなのに、朝が弱いにも程がある。
お互い働いているから、家事は分担してやる。烈が皿洗いをしている間に私はメイクを済ませる。そして少し早く準備が整うと、ソファに並んで座り、テレビをぼんやりと見るのがルーティーン化されつつあった。
綺麗なお姉さんが出てきて、天気予報が始まる。その時、烈が小さな声で「せや…」と漏らした。何か思い付いたのだろうか。そこで『どうしたの?』と聞くような可愛げは持ち合わせていないし、烈もそれを望んではいない。結局、それが何だったのかは分からないまま私たちは家を出た。
駅までの道を夫婦揃って並んで行くのだから、まぁ仲は良い方なんだと思う。付き合っている時からそこまでベタベタしてはいなかった。じゃあ結婚した一番の理由はと言うと、楽だから。気を使わなくて良いし、烈の言葉数の少なさが心地良かったから。
今日も私の隣りを歩く烈の横顔は綺麗だった。
それから駅で別れ、お互い仕事に向かおうとした時だった。
「今日、早めに帰るわ」
烈がそう言った。いつもそんな事言わないから、驚いて立ち尽くしてしまった。
「…遅刻すんで」
烈は私の頭にポンと手を置き、私とは反対方向に歩いて行った。
え、何?発情期…?
どんどん離れていく烈の後ろ姿は何だか嬉しそうで、それもやっぱり綺麗だった。
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