連休中だけの魔法
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『あっ…!いた!モッチ!!』
どうやら飼い主が追いついたようだ。声の方を見て驚いてしまった。俺が密かに想いを寄せる名字さんだったのだ。
『あれっ、仙道くん?!仙道くんがうちの犬つかまえてくれたの?ありがとう!散歩中にリードが腕から抜けちゃってさ…』
いつも制服を着ている時は髪を高い位置に結んでいるが、私服姿でしかも髪を下ろしている。透き通るように細く、サラサラと風に靡いている。
「…参ったな、こりゃ」
『え?何が?』
「あ…いや…」
不思議な力があるかも、だなんていきなり言える訳もなく、俺はテキトーに逃れる事にした。
「犬の名前がうちの監督と同じだからさ」
『え……田岡先生ってモイチだよね…?こっちはモッチだよ?』
「あぁ、モイチ……そっか。惜しいな」
『アハハハ!仙道くん、まだ目が覚めてないんじゃないの?』
覚めてないも何も驚き過ぎて、覚醒しまくっていた。このチャンスを逃す訳にはいかないよな。
「今日これから練習試合するんだ。良かったら観てかない?」
『え、良いの?!』
それから、名字さんは最後まで試合を観てくれて、楽しかった、凄かった、と見た事も無い満面の笑顔を見せてくれた。
あぁ、やっぱり好きだな、と改めて思う。
それから連休が終わってからは、あの不思議な現象が起こる事は無かった。
連休中だけ現れた、不思議な魔法だったのかもしれない。ここからは自分で何とかしろって事だよな。
教室の窓からぼんやりと空を眺めていると、後ろから声を掛けられた。
『仙道くん、おはよ。昨日はホントありがとね。また部活観に行っても良いかな?』
このチャンスは絶対に逃さない。
またあの笑顔が見たいから。
「もちろん」
恥ずかしそうに微笑む彼女もまた、とびきり可愛かった。
おわり
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