3月21日
『…何とか終わりましたね……』
「おー……さすがに今回はヤバかったな」
あと一時間ちょっとで日付が変わりそうだというのに、私は三井先輩と一緒にまだ会社にいた。顧客から急な追加発注があり、しかもそれがよりによって輸入品ときたものだから、あらゆる輸送手段を駆使して、今ようやく納期に間に合うよう手配が済んだ所だった。
『もう家に帰る気力無い…』
「明日休みなんだから朝までここにいる訳に行かねーだろ。ほら、帰るぞ。電車無くなるぞ」
『三井先輩まさかこのまま帰っちゃうつもりですか?!可愛い後輩がこ〜んなにボロボロになるまで頑張ったっていうのに!!』
「…元気じゃねーかよ。分かった。じゃあ何か食ってくか」
『やったー!!』
三井先輩はぶっきらぼうであんまり愛想は無いけれど、こうやって頼られるのが嫌いじゃないと何となく分かるようになった。私も相棒として様になってきたのかな…なんて考えてしまう。
「おい、ぼーっとすんなよ。行くぞ」
『はいっ!』
私は三井先輩と一緒に会社を出た。
その後、馴染みのお店に連絡をしても週末という事もあってかどこもいっぱいだと断られてしまった。
「ったく、どいつもこいつも遅くまで飲みやがって」
『…三井先輩、公園いきましょうよ。少しなら桜も咲いてるかもしれないし』
「おー、いいなそれ。そうしようぜ」
三井先輩が私の方を見てニッと笑った。改めて思うが三井先輩ってかっこいい顔してるよなぁ…とついつい見惚れてしまう。そういう時、決まって先輩は「ぼーっとすんな」と言う。けれど、原因はあなたにもあるんですよっ!と、心の中で小さく言い返すのだった。
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