凍える身体を温めて
凍える身体を温めて(岸本ver.)
岸本くんと付き合い始めて1ヶ月くらいになる。
地味で何の取り柄も無い私と、学校では知らない人はいないくらい目立つ岸本くんがこうしてほぼ毎日一緒に帰っているのだから、それは驚くだろう。でも、一番驚いているのは私自身かもしれない。
川沿いの道に差し掛かると、急に体感温度が低くなる。無意識に身体に変な力が入る。そろそろマフラーや手袋なんかを装備した方が良いかもしれない。
岸本くんにチラリと目線をやると、私と同じように身体を縮ませていた。
『そろそろ手袋とか用意せんとね』
悴む手をスリスリと擦り合わせながら言うと、岸本くんの大きな手が私の両手を包む。
「…要らんやろ。こうしといたらええ」
目を合わせず、恥ずかしそうに岸本くんは言った。
どうやら今年の冬は、手袋を用意しなくても良さそうだ。
おわり