凍える身体を温めて


凍える身体を温めて(沢北ver.)

土曜日は、アメリカにいる栄治とテレビ電話をする。今日は栄治もオフらしく、久しぶりにお酒を飲みながら話すことになった。

と言っても、栄治は嘘みたいにお酒が弱い。それなのに、たまにこうして飲みながら話したいと言う。そういう時はだいたい弱っている時だ。

初めの内はお互い笑いながら色々な話をしていた。しかし、お酒が進むにつれて栄治はどんどんネガティブな発言をしていく。最終的には黙り込んでチビチビとお酒を飲み出した。


『栄治〜、何かあったの?大学でいじめられた?』

「違うよ」

『じゃあ誰にいじめられたの?』

「何でいじめられてる前提なんだよ」


つっこめるだけまだ元気なのか…なんて、会話の中から落ち込み度合いを読み取る。


『じゃあどうしたのよ』

「……あー!!もうっ!!何だよその顔!!可愛過ぎんだよ!!」


突然、栄治は大きな声を出し、両手で顔を覆いながらジタバタともがいている。どうリアクションすべきか戸惑っていると、グッと何かを抑えたように、栄治は顔に掛かる手を外した。


「…お前に会いたくて凹んでんだっつーの」

『えっ…?』

「だからある意味俺はお前にいじめられてんだ」


ニッと歯を見せる子どもみたいな笑顔に胸がギュッと締め付けられる。


「クリスマスは会いに帰るよ」

『…うん。待ってるね』


サンタさんみたいに空を飛んでくる栄治を笑顔で迎えたい。帰ってきたら、めちゃくちゃ甘やかしてあげよう。


画面に映るウトウトと船を漕ぐ栄治にそっとキスを落とした。


クリスマスは、もうすぐ。



おわり

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