凍える身体を温めて


凍える身体を温めて(深津ver.)

委員会ですっかり遅くなり、外はもう暗くなっていた。けれど秋田の冬は真っ白な雪がどんどん積もるから、夏の夜より明るく感じる。

ただひたすら、深々と降り続ける雪……そう、歩道を埋め尽くすくらいに…。

私は地面に一歩を踏み出せず、玄関に立ち尽くしていた。今この雪の中に足を突っ込めば確実に足は冷えるし、何なら抜けなくなってしまうかもしれない。

先生に行って何とかして貰うしかないか…。そう思い職員室へ行こうとすると、同じ委員会の深津くんが雪掻きシャベルを持って現れた。


『深津くん、それどうしたの?』

「職員室から借りてきたピョン。足の踏み場が無くて帰れないピョン」


そう言うと、深津くんはシャベルを雪に突っ込み、サーッと押しながら歩き出した。そして少しこちらを振り返って言った。


「早く着いてくるピョン。雪はどんどん積もるピョン」

『あっ…うん…!ありがと。じゃあ後ろ着いて行くね』


深津くんの後ろ姿をまじまじと眺めてみる。

身長高いな…。

バスケ部のキャプテンで全国でも有名な選手なんだよね?

勉強も出来て、気取ってなくて、でも語尾はピョンだし…。

そんな人がシャベルを押しながら雪を掻き分けて歩いているだなんて…。なんて滑稽なのだろう。ちぐはぐで全てが愛おしくなる。


『深津く〜ん!もう少しゆっくり歩いて〜』

「あぁ…すまんピョン」


私に合わせてゆっくりと進む。

時々振り返ってちゃんといるかを確認してくれるのが嬉しい。


『ねぇ、背中に飛び付きたいって言ったらどうする?』


思わずそう言うと、深津くんは脚をピタリと止めた。


「望むところだピョン」


私は、深津くんが好きだなぁ…と思った。でもまだ言う勇気は無いから、声を出さずに口を〝好き〟と動かしてみる。

白い吐息が出て深津くんの背中に当たり、吸い込まれるように無くなっていった。


どうかまだ、気付かれませんように。



おわり

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