凍える身体を温めて


凍える身体を温めて(仙道ver.)


「先輩、小さくて可愛い」

『ちょ…近いって…!』


どうして…こうなった…?


そもそもの発端は仙道が遅刻したことから始まった。怒った田岡監督は、罰としてマネージャーである私の買い出しの荷物持ちをして来いと怒鳴った。


「そんなの罰にならないじゃないですかぁ」


と、ヘラヘラする仙道に正直ムッとしたけれど、反面、荷物を持って貰えるのは助かる。なぜなら今日はいつものスポドリや応急処置品ではなく、一年の最後を締め括るおでんパーティーの買い出しをするからだ。

おでんの具材は意外と重く、昨年は一人で行き、大変な思いをしたのだ。


買い物中も仙道はヘラヘラとしていて、「デートみたいだね」とか何とか言っていた。ふざけないで真面目にやって欲しいものだが、仙道にそれを求めても無駄だという事は百万年前から分かっていたことだ。

大人数分の食材は当然、重い荷物と化す。そしていくらバスケ部のマネージャーと言えど身長153cmと小柄な私は意図せずよろけてしまう。

腕を掴まれた、と思った途端わちゃわちゃと体制が変わり、気が付けば今、後輩の仙道に〝壁ドン〟されている状況にある。


『あの…仙道……助けてくれてありがたいんだけど、そろそろどいて…?』


自分よりもずっと身長が高い仙道から、小さい私は逃げられる訳が無い。


「先輩こそそろそろ気付いて下さいよ。俺が先輩を好きだって」

『……!!』


そんなのとっくに気付いてた、って言ったらどんな顔するのかな…。


二人の白い吐息が、冬の夕空で交わり始めた。



おわり

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