凍える身体を温めて
凍える身体を温めて(流川ver.)
昼休み
クラスの友だちとお弁当を食べていると、キャーッと黄色い声が廊下の向こうからどんどん近付いてくるのが分かった。
(もしかして…)
私は黄色い声の発生源が何なのか、大体予想できていた。そして予想通り、その発生源が私の目の前に現れた。
「おい」
『な、何?楓…』
幼なじみの楓は中学に入ったあたりから物凄くモテ始め、高校生になった今も尚それは続いている。そんな楓と幼なじみというポジションなだけで、私の高校生活は色々とめまぐるしい。
「…さみー」
『えっ…?!ちょ…まさか…!』
幼い頃、寒がりな楓に『私の首に触るとあったかいよ』と言ったことがある。それ以来、楓は手が冷えるとよく私の首に触れていた。
でももう高校生だし、しかも此処は学校だし…流石にそれは…!
そんな私の気持ちなんてお構い無しに、楓の大きくて冷たい手が私の首に触れる。
『…っ…冷たっ……!!』
一応そんな声は出したものの、周りのざわつきに混じって悲鳴に似た声が時々聞こえた。
楓は満足したのか、スッと手を離した。
『ちょ…!楓!学校でコレするの止めてよっ』
「…なんで?」
『なんでって…は、恥ずかしいでしょう?』
楓は少し考えた後、フッと微笑んでこう言った。
「それじゃ、家に帰ったら続きな」
また誤解されるような言い方を…。
でも、決して嫌では無い自分がいる。
この気持ちはきっと──。
おわり