色ヅク夜
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その後、目的地に到着した。そこはキャンプ場のような場所で、広い草原がどこまでも続いていた。一面の柔らかい緑色の向こうには、すっかり陽が落ちた空が広がっている。
本当に何も無いこの場所に、淳は何故私を連れてきたのだろう。そう思いながら途中で買ったココアを飲み、ジッとしていた。すると突然、肩を抱かれ、驚いて淳を見ると柔らかく微笑んでこっちを見ていた。
「ほら、そろそろやで?上、見てみ?」
『上…?うわぁぁ…!』
見上げた先には満天の星空が広がっていた。小さな宝石が一つ一つ散りばめられたように、キラキラと光を放っている。
『綺麗だねぇ。宝石箱の中にいるみたい』
「そうやねぇ。あ、もちろんぱこが一番綺麗やで?星よりも梅の花よりも」
『はいはい。ありがと〜』
お決まりのサブい台詞を言われ、何だか安心する。そして今日ずっと思っていた事を聞いてみることにした。
『ね、何でここに連れて来てくれたの?しかもこの日にこだわってたでしょ?』
「今日は何月何日やったっけ?」
『3月3日?え、ひな祭り?』
「そう。ひな祭りは女の子のお祭りやろ?だからぱこを労ったろ〜って思ってん。最近ちょっとお疲れみたいやし」
予想外の返答にどうリアクションして良いものか戸惑う。何がマンボよ。全部、淳の優しさじゃないの。
『ありがと、淳。確かに最近ちょっと疲れてたかも。こういう非日常って大事だね。車運転する淳も新鮮だったな』
「ホンマ?でもさぁ、車だと一個だけ短所があんねんなぁ」
『短所?』
「運転しとったら、ぱこの顔が見えへんねんもん。僕に向けた笑顔が見られへんのは寂しい」
『ふふっ…淳らしい答えだね』
星の柔らかい光に照らされて、私たちは引き寄せられるように唇を重ねた。お互い好きという気持ちを注ぎ合うように、長い長いキスをした。そして唇を離した時の淳の表情がやっぱり綺麗で、また少し悔しい。
「いつもお疲れ様。大好きやで、ぱこ」
『ありがとう。私も大好きだよ、淳』
そのままギュッと抱き締められ、淳の腕の中にすっぽりと包まれてしまう。
私の腕じゃ回りきらない広い背中越しに、流れる星を見た。
どうかこれからもずっと、淳の隣りにいられますように。
心の中で3回唱え終えると、自然と涙が溢れた。
明日からまた頑張ろう。
桃の節句に相応しい、ほんのりと心が色付く夜だった。
おわり
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