ダンデライオンになって
NAME CHANGE
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土屋は名前の髪に優しく指を通しながら、愛おしそうに甘く囁く。
「綺麗な髪やね。今くらいの長さ、よう似合うとるし、好きやなぁ」
『…もしショートにしたらどーする?他の誰かにフラれてもーた、とか』
「ハハ…世界に二人ぼっちなのに?」
『もう一人くらいおるかもしれへんやん』
土屋は膝を抱える名前の手をそっと取り、包み込むように握った。
「名前が変わってしもても、僕の心はもうずっと名前のモンやで。名前がしたいようにしたらええよ」
『淳の事も、淳がくれた言葉も思い出も、全部突然忘れちゃっても?』
「ええよ。そしたら、また初めから恋に落ちたらええだけや」
二人は海からは目線を離さず、お互いに少し肩を寄せ合った。顔が近付いた所でようやく目と目を合わせる。そこで名前の目がうるうると熱を帯びている事を、土屋は見逃さなかった。土屋は優しく微笑み、そっと名前の頬に触れた。
「綺麗な景色見て、おセンチになったん?」
『ううん。逆。幸せやなぁって思った』
「ふふ…僕も幸せやで」
『ね、淳』
「んー?」
『もし私が先に死んじゃったら、時々は思い出してな?』
「もちろん。僕が先でもおんなじやで?」
風が止み、雲が割れ、陽が二人を照らす。
二人の瞳にも目の前の海のように光が生まれ、鏡のようにお互いが映し出される。
「名前」
『はい』
「何処にいても何回でも見つけたる。だから何回でも恋に落ちような?」
『こんな私で良ければ』
「名前がええねん」
冷え切った唇がそっと重なり、そこから熱が生まれる。
好きという気持ちが溢れ出す。
『ヘックシュッ!うわ、雰囲気台無しやぁ』
「冷えてきたなぁ。そろそろ宿に戻ろか。あ、でもおばちゃんにお布団一組でええですって言うてもーたから、僕も入れてなぁ」
『二組敷いても一緒のに入るやろ〜』
「ハハハ。よう分かってますねぇ」
二人の声がたんぽぽの綿毛のように、ふわふわと風に乗っていく。
遠い昔、そして遠い未来にも響き渡るように。
次もまた何処か別々の場所に辿り着いても、どうかまた寄り添って微笑み合えますように。
たんぽぽの花言葉:〝幸福〟
おわり
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