ダンデライオンになって
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『うわぁ!広っ!何も無い!寒っ!!』
名前が両手を広げ、大声を出している。その視線の先には広大な海が広がっていた。
土屋と名前はお互い有給消化をしなければならないと言う事で合わせて休暇を取り、旅行に来ている。真冬のこの時期、少しでも温かい所に行こうという事で散々迷ったが行き先は九州に決めた。
そして二人の共通意識として〝THE観光地〟は避ける事にしていた。何故なら、有名どころはいつでも行ける訳で、折角二人で休みを合わせたのだからどうせなら景色が綺麗な田舎に行ってみよう、という事になったのだった。
二人の目の前には海水浴場でも何でもない、寒風吹き抜ける穏やかな海が広がっている。晴れている事もあってか、キラキラ光る翠玉色の海原が何処までも果てしなく続く。二人は寄り添って座り、何もせずただただ地平線を眺めていた。
『ホンマに何もあれへんね』
「そうやねぇ。今、世界には僕ら二人ぼっちなのかもしれへんね」
風が磯の香を運び、二人の髪をそよそよと揺らし、波の音に包まれる。
名前は初めて土屋に出会った時の事を思い出していた。あの日を思うと、土屋は随分と感情表現が豊かになったものだと心が和む。
目を細めて笑う顔も、口を尖らせて拗ねる顔も、自分を愛おしそうに見つめる顔も、安心し切った寝顔も、たくさん見てきた。自惚れではないが、土屋が本心を見せてくれるようになったのは自分と過ごしてきた時間が土屋にとっても幸せな物だったからなのだろう。名前はそう噛み締めていた。
.
1/3ページ