みっけ!
教授は解答用紙をファイルに詰め込み「お疲れさん。戸締りヨロシク」と言って帰ってしまった。私は学部生たちが全員いなくなるまでここに残らなければならない。彼が狸さんなのかどうか確かめたい。そう思い、彼の方を見ると立ち上がってリュックを背負っていた。待って、まだ帰らないで…!
『た、狸さん…!待って…っ…!』
思わず叫んでしまうと、彼がピクリと反応しこちらを振り返った。
「いや…アレは同じく熊のつもりやったんですけど……」
『えっ…あの…熊じゃなくてウォンバットなんやけど……』
「えっ…うぉん…?」
『ブッ…!』 「……っ…」
目が合うと、私たちは同時に吹き出して笑った。暫く笑いが止まらなくて、周りの学生たちが不思議そうにこちらを見ながら退室していく。
「やっと見つけた」
『え…?』
「ずっとどんな人なんやろうって思っとったんです。その毛布見てすぐに分かりました」
『あ…わ、私も…会ってみたいって思ってました…っ…!』
「ほな、まずはお友だちからっちゅー事で。とりあえず学食行って飯でもどーですか、先輩」
ニッとイタズラっぽく笑うその笑顔に、私の心は完全に奪われてしまった。今、どんな顔をしているのか怖くてつい俯いてしまう。
チラリと目線をやると、見上げなければ見えない程高い所に顔がある。この高さに慣れる日がいつか来るのだろうか。私は精一杯顔を上げて、声を振り絞る。
『あの…』
「はい?」
『私を見つけてくれて、ありがとう』
そう言った時、表情から彼もドキドキしているんだとすぐに分かった。
講義室の外はよく晴れていて、温かかった。
もう少ししたら、ブランケットは要らなくなるかもしれない。
そんな気がした。
おわり
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