風に乗る
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暫く歩いたがウェンディは抵抗もせず、何も言わずにただ黙って着いてきた。繋いだ手が震えているような気がして、俺は思わず立ち止まる。
「あそこのベンチで少し休もうぜ」
俺はウェンディを座らせ、近くの販売機で飲み物を買った。こういう時、女が何を飲むのかイマイチよく分からないがとりあえずミルクティーを買って渡した。
ウェンディは小さく『ありがと』と言い、温かいペットボトルを両手で包んだ。
「何であんな事してたんだよ。金が欲しいなら普通にバイトすれば良いだろーが」
『…別にお金が欲しかった訳じゃない』
じゃあ何で…と理由を聞こうとしたが、何処か悔しそうなウェンディを見ると言葉が上手く出なかった。
暫く沈黙が続いた。
さっき自分用に買った缶コーヒーが、どんどん冷めていくのが分かる。
するとウェンディがスッと立ち上がり、俺に背を向けたまま話を始めた。
『私ね、大人になりたくないなぁって思ったの。いつか私も無意識に誰かを傷付けちゃうような気がして…怖くなった。物凄く腹が立ったから、仕返しがしたかった。そんな感じ…かな』
制服のスカートがそよそよと風に靡く。何だかこのままウェンディが空の向こうに飛び立っていってしまいそうな気がした。
「俺は早く大人になりてーけどな」
『どうして?』
「自分で自分の事を決められるから、かな。バスケも続けたいし、車も運転したい。そうだ、免許取ったらドライブに連れてってやるよ。行きたいトコ考えとけよな」
俺がそう言うと、ウェンディはププッと吹き出して笑い出した。何だよ、ちゃんと笑えるじゃねーか…。
「な、何で笑うんだよ」
『ゴメ……ハハッ…誘い方下手過ぎっ…!』
顔だけこちらを振り返り、少し斜めに頭を傾げるウェンディがクラクラする程可愛くて、心臓の音が聞かれてしまうのではないかと焦る。
『藤真…?』
「あ…いや……その…必ず良かったって思えるようにしてやる。だから…」
『…だから?』
「俺の隣りに、いろよな」
『えっ…?』
「ずっと好きだったんだよ…ウェンディが…」
ずっと秘めてきた想いを、言葉にして吐き出してみる。白い吐息が、キラキラと小さな光の粒になって風に舞い、ウェンディの方に流れていく。すると、まるで魔法が掛かったかのようにウェンディの表情がみるみる柔らかくなっていき、頬を染めていた。
『…それなら、大人になるのも悪くないかも』
無理に大人になろうとしなくて良い。
君は君のままで充分素敵だから。
その柔らかい微笑みが永遠に絶えない世界にしてみせる。
それがたった今から俺の生きる意味になった。
手を取り合って行こう。
遠くの空に何かが光った気がした。
二人の〝ネバーランド〟が始まる。
おわり
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