「南さん」になった日
NAME CHANGE
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『ねぇ、烈』
「ん?」
『最後に一回だけ〝名字〟って呼んで欲しい』
「は?何や急に」
『お願い。烈に呼ばれたい』
烈は不思議そうにしていたけれど、何かを察したのか私の手を握った。河原で告白されたあの日みたいに。そしてジッと私の目を見ながら、ゆっくりと口を開く。
「名字、好きや」
私は思わず烈に抱き着いた。長い腕が私の背中を優しく包む。すっかり慣れたこの場所が、やっぱり一番安心出来る。
『…ありがと。私も好きやで、南』
その後、手を繋いで役所に行き、婚姻届を提出した。窓口のお姉さんがにっこりと微笑みながら「おめでとうございます。お幸せに」と言ってくれた時、ただのツルツルの紙だと言っていた自分が恥ずかしくなった。
世の夫婦は、こんなにも幸せな瞬間を過ごしてきたのか。
お父さんとお母さんも同じ気持ちだったのかな…。
帰り道も私たちは手を繋いでいた。さっきより温かい気がするのは何故だろう。
「何ニヤニヤしとん」
『んー?幸せやなぁと思って』
「そら良かった。俺もおんなじやから」
目を細め、愛おしそうに私を見つめる目の前のこの人が、私の〝夫になる人〟。
私の一番、大切な人。
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