「南さん」になった日
NAME CHANGE
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そんなことを考えているうちに烈が記入を終え、ペンを置いた。
「ん。書いたで」
〝夫になる人〟の欄に〝南 烈〟と丁寧に書かれている。その横には〝妻になる人〟とあり、ここが私が記入する所だ。
私は少し緊張しながらも、ゆっくりと文字を書いていく。
もう〝名字〟の姓を名乗らないんだ。これを出したその瞬間から、私は〝南 名前〟になる。
幼稚園の卒園式で呼ばれた時、大きな声で返事をするとお母さんがハンカチで涙を拭ったのをよく覚えている。あの時はどうしてなのかよく分からなかったけれど、今ならちゃんと分かるし、愛情をたくさん貰っていたなと思う。
小学生の地域の作文コンクールで佳作に選ばれて呼ばれた時、こんな私にも一つくらい取り柄があるんだと思った。賞状を受け取った時の感動は今でも忘れない。
中学生になると名字で呼ばれる事が増え、初めこそ違和感があったものの卒業する頃にはすっかり慣れていた。
そして高校生の時、何となく気になっていた烈をあの日河原で見つけ、恋に落ちた。大好きな烈が「名字」と呼ぶ。それだけで何だか特別な気がして、ベッドに入ると思い出しては足をバタバタさせていた。
付き合い出してから少しすると、下の名前で呼ばれるようになった。それから名字で呼ばれた事はたぶん無いと思う。
最後の一文字を書き終え、私はペンを置いた。二人の名前が並ぶと、さっきまでただの紙だった物が何だかキラキラと輝いて見える。私たちの約束を、私たちの決意をより硬く結ぶように。
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