「南さん」になった日
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今晩は久しぶりに烈が子どもたちの寝かしつけをしてくれている。私はその間に片付けを終わらせようとバタバタ動いていた。その時、ふとテレビから結婚準備雑誌なるもののCMが流れてきた。「今ならオリジナル婚姻届付いてくる!」というのを聞いて、婚姻届って役所から貰う以外の物でも使える事を知る。
(婚姻届…か……)
婚姻届を役所に貰いに行ったのは烈だった。プロポーズを受けた数日後、仕事で役所に用事があったからついでに貰ってきたと言っていたのをよく覚えている。でもその時、妙に照れている烈を見て、ついででは無いとすぐに分かった。
初めて見る婚姻届は想像よりチープな印象で、触ってみるとなんだか薄くてツルツルした紙だった。この紙に名前や住所を書き、判子を押して提出すれば私たちはその瞬間から夫婦になる。たった一枚のこの紙で、私の名字も社会への責任も大きく変わってしまう。
こんな見たこともない素材のツルツルの紙が、私と烈を家族にしてくれる。
世の中の夫婦は皆そうしてきたのかと思うと、何だか面白みに欠けると思った。
だから婚姻届を目の前に出された時、私はあまり書くことにノリ気では無かった。
『…烈、先に書いてや』
「おう…」
烈が私の部屋の小さなテーブルで窮屈そうに縮こまりながら、文字を記していく。こういう時、間違えたらどうしようとか変にかしこまらない烈が好き。
長い睫毛、輪郭がハッキリした唇、妙にセクシーなの喉仏、黒くてサラサラの髪の毛、ベッドで私の名前を呼ぶ甘い声
みんな、私だけのものになる。
こんなにもたくさんの幸せを独り占め出来るようになるというのに、何故それをたった一枚の紙に事務的な事を書いて提出するだけで済ませるのだろうか。
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