妄想、晴れの日
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二年後の一月(皆の妄想)
市民会館の前には振袖姿の名前と、臙脂色の細身スーツでお洒落にキメる岸本が立っている。
「お〜い!名前ちゃ〜ん!岸本〜!」
土屋が笑顔で手を振りながら近付いてくる。シンプルな黒のスーツなのに妙に品があるように見えるのは、土屋の佇まいが醸し出す何かからくるのだろう。
『淳、かっこええなぁ。和装も似合いそうやけど、やっぱ背高いし、スーツええね』
「ありがとう。名前ちゃん、着物よう似合うてるね。いつもと雰囲気ちゃうから何や緊張するなぁ。…ん?岸本、何や静かやない?どないしたん?」
「いや…まぁ…ちょっと…」
岸本の目がうるうると熱くなっているのを見て、名前と土屋はギョッとする。
『えっ…ちょ…実理、何泣いとんの…?』
「あ!もしかして名前ちゃんの振袖姿見て、大人になったもんやなぁ〜って感動してんねやろ」
「…悪いか」
『いや…悪ないけど……え、何?実理って私のオトンやったっけ…?』
一番テンションを上げてワイワイ騒ぐと思っていた岸本がこんな調子のため、二人は何だか出鼻を挫かれた気分だった。そこにのそのそと面倒くさそうに南が現れた。
「何やお前ら、えらい大人しいな」
『あ、烈。いやぁ〜、予想外の展開になっとってなぁ』
「はぁ?」
「南、そんな事より名前ちゃんの振袖姿見てどうなん?何か言うたってやぁ」
土屋が場の雰囲気を変えようと、少しテンション高めで南に声を掛ける。南は上から下までジッと名前を見て言った。
「お前が着たら七五三やな」
その言葉に三人は一瞬、凍りついたように動きを止める。そして、低めだったテンションバロメーターは一気にMAXを越えていった。
『うわ!言うた!!この人ホンマに言うたでぇ!』
「南…お前はそういう所ホンマ変わらんよな。まぁそれがええ所っちゃええ所なんやけどなぁ…」
「アハハハハ!アカン…ツボった……ベッタベタやん……おもろ…っ…ブフッ…!」
三人のリアクションを見て南は二年前のあの日を思い出し、しまった…と動きを止める。それを見かねたのか、名前はニッと笑って見せた。
『ほら烈、行こ!式始まるで!』
笑顔が戻った名前に手を引かれ、南は会場へ向かい歩き出す。
幼い頃から知っているその手はいつの間にか綺麗な女の手になっていて、大人になったんだなと今更ながら実感する。
ずっと一緒に過ごしてきたこの四人で迎えた成人の日。
前を歩く名前の振袖の模様は、きっと一生忘れる事は無い。
そう思い、南は空を見上げる。
そこには昔と変わらず、高く澄んだ青が広がっていた。
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