未来もきっと
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少ししてお店に着くと、当然もう暖簾は出ていない。魚住さんが鍵を開け、そこで一歩下がった。
「名前が開けろ」
『え…う、うん』
不思議に思ったが、私はゆっくりと扉を開けた。するとカウンターの上にある物を見て思わず声を上げる。
『えっ…!嘘…?!な、何で…?』
そこには私がデザインしたあのお重があったのだ。何故ここにこれがあるのか分からず、私はただただパニックになっていた。
『も、もしかして…買ってくれたの…?』
「おう。開店前の百貨店に並んでな」
『言ってくれればあげたのに…』
そう言うと、魚住さんは私をふわりと抱き締めた。久しぶりの感覚に頭がクラクラしてくる。
「名前の作品が出来たら、自分で稼いだ金で買うと決めてたんだ。俺が汗水流して働いた金の最も幸せな使い方だ」
『ありがとう。すっごく嬉しい…』
そんな風に思っていてくれただなんて、知らなかった。この人を選んで良かった。この人に買って貰えて幸せだと、喜びを噛み締めた。
「もう一つ見せたい物があるんだ。その重箱の蓋を開けてみてくれ」
そう言われ、私はお重の蓋に手をかけ、そっと蓋を開けた。すると中にはおせち料理が入っていた。色とりどりで美しく、キラキラ輝いて見える。
『こ、これ…魚住さんが作ったの…?』
「あぁ。今日の為に結構頑張ったんだぞ」
にっこり笑う魚住さんの笑顔を見て、胸に飛び付かない訳が無かった。こんなに素敵なサプライズを出来る人は、そういないだろう。私は魚住さんに抱き付いたまま、お重の中身を見ていく。
『あっ…だし巻き玉子だ。大阪に行く前の、あの夜を思い出しちゃうな』
「俺はだし巻きを作る度にあの夜を思い出す。もう、初めて認められた料理ってだけでは無くなってしまったな」
『また思い出が増えちゃったね』
「そうだな。…なあ、名前」
『ん?』
「来年もまたこの重箱におせちを作っても良いか?」
魚住さんは恥ずかしそうに言った。私は彼の言いたいことがよく分かり、ついついニヤけてしまう。
『来年と言わず、再来年もこれからもずーっと一緒におせちを食べたいな』
そう言うと、魚住さんの顔はみるみる真っ赤になっていく。
「わ、分かった。約束する」
『えへへ。やったぁ。あ、そういえば前に電話した時、言いかけた事なんだけどね』
「ああ。何を言おうとしたんだ?」
『初めての仕事が和食器って、運命感じちゃうな…って』
魚住さんの顔はさらに赤くなってしまった。そして小さく「俺もそう思っていた」と言った。
よく似てるね、私たち。
私たちはこれからも夢に向かって進んでいく。
進んだ先でも、手を握っていられると良いな。
だからどうか、離さないでね。
未来もきっと、愛で溢れているから。
おわり
あとがき→