よっぽど
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そう思うと急に言葉が出てこなくなり、私は黙ってしまった。すると、大くんは慌てたように話を続けた。
「あ…ごめんな!何の電話だよって話だよな?えっと…その…実はさ、引退したらずっとなまえちゃんに言おうって決めてた事があるんだ」
『何?』
「また、あの頃みたいに仲良くして欲しい…。勝手な事言ってるって分かってるけど…俺…高校生のうちはずっと我慢してたからさ…」
大くんは今、どんな顔をして話しているのだろう。想像するだけで、胸の高鳴りはどんどん遠くまで響いていく。
『分かった。でも私、春から東京だからなかなか会えなくなっちゃうけどね…』
「その事なんだけどさ…俺も東京の大学、決まったんだよな」
『えぇっ?!』
仕舞おうとしていた気持ちは、東京に持って行っても大丈夫なのかもしれない。そう思い、私は箱に入れた文集を再び手に取った。
『ちょうどね、今、幼稚園の文集が出てきて見てたんだ。そしたらいきなり大くんから電話があって…ホント、びっくりだよ』
「え、そうなの?!俺、何て書いたかなぁ…」
『見てみようか?』
私は文集を開き、大くんのページを探そうとすると、すぐに大くんに止められてしまう。
「…あーっ!ちょっと待った!」
『えっ…?』
「恥ずかしいから…」
『…ごめん。もう見つけちゃった』
そこには力強く、大きな文字が描かれていた。
おおきくなったらなりたいもの「なまえちゃんとけっこん」
「…見た?」
『うん。見た』
「えっと…あの…」
『大くんも、私が書いたページを見たら良いよ』
その後、文集を読んだ大くんが家にやって来て、これでもかと強く強く抱き締められた。
よっぽど、嬉しかったんだろうな。
新しい春は、もうすぐそこで私たちを待っている。
私は文集を、東京行きの箱の中にそっと仕舞い込んだ。
おわり
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