よっぽど
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今年の大掃除は今までとは少し違う。
推薦で東京の大学に合格が決まり、私は早々に住む家を決めた。つまり、春には引っ越しをしてこの部屋を出て行く。生まれた家を離れるというのは、こんなにも寂しいものなんだと痛感している所だ。
そんな訳で、今年の大掃除は要る、要らないだけでなく、東京に持って行く物と置いていくものも選別しなければならないのだ。
クローゼットの奥にある箱を開けると、中学の時のジャージ、小学生の時に使っていた三角定規と分度器のセット、幼稚園の時のお帳面なんかも出てきた。こうして片付けをしてみると、私は意外と捨てられない人間なのかもしれない…。
そして、ようやく辿り着いた箱の底には何冊か本のような物が入っていた。最初に手に取ったのは、幼稚園の時の卒園記念文集だった。文集と言っても、幼稚園で楽しかったことや好きな食べ物なんかが書いてあるだけだ。私は自分が何と書いたのか全く覚えておらず、気になって自分のページを開いてみた。するとそこにはヨレヨレの字で、色々な事が書かれていた。
ようちえんでたのしかったこと「だいくんとあそんだこと」
すきなたべもの「ぶどう」
おおきくなったらなりたいもの「だいくんのおよめさん」
ここで胸に突き刺さる名前が出てきた。〝だいくん〟とは幼なじみの諸星大のことだ。私の初恋の人で、その想いは今も変わらず持ち続けている。
高校生になり、バスケが強い学校からのオファーで大くんはこの街以外のコミュニティを持つようになった。平日も遅くまで、休日もほとんどが部活漬けの毎日な大くんとは対照的に、私は平凡な高校生活を送ってきた。友だちもでき、それなりに青春を謳歌してきたけれど、心のどこかではいつも大くんの影を追っていた。
そしてつい先日、東京のアパートを契約したその時、大くんへの想いは胸に閉まっておこうと心に決めたのだった。それなのに、どうしてまた揺らがせるようなことになっているのだろう…。
「なまえちゃん、おおきくなったらけっこんしよ?」
明るくて、外遊びが大好きで、ちょっぴりドジで、優しい…そんな大くんが言ったあの言葉、あの表情、あの風景が今でも鮮明に思い出せる。
もちろんそれを鵜呑みにしている訳ではないけれど、いっ時でも大くんが私を好きだったという事に胸が高鳴ってしまう。
やっぱり、忘れる事なんて出来ないのかなぁ…。
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