藤真side
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『今日、冬至だからさ、かぼちゃ煮たの。あと、柚子湯の素も用意したんだよ。一緒に温まろうね』
かぼちゃ…こんなに柔らかくて非力な腕で料理出来たのだろうか。きっと一生懸命用意してくれたのだろう。俺と過ごす時間のために。そう思うと久しぶりに胸の奥から込み上げてくるものがあり、頭のネジが外れてしまいそうになる。今抱えているこの愛おしいぬくもりをもう決して離したくない。
「名前がいて良かった」
『私も健司がいて良かったよ』
見た目で勝手なイメージを持たれることに嫌気がさす人生だった。そんな俺のみっともない部分も全部受け入れてくれたのが名前だった。
俺が俺でいられるのは、もうここしかない。
抱きしめる力を強めると、全てを解すように受け入れられて溶けてしまいそうになる。
ずっと俺の側にいて欲しい。
『さ、ご飯にしよ?張り切って昨日から準備してたんだから!』
「ハードル上げたな」
『あ、いじわる』
「バーカ。お前の作るモンは何でも美味いってとっくに知ってるっつーの」
こんなやりとりをするのも随分久しぶりで、自然と笑みが溢れてしまう。疲れなんてもう何処かに行ってしまったように思えた。
どうやら俺はもう、名前がいないと生きていけそうにないようだ。
可愛い。
触れたい。
離れたくない。
好きだ。
俺は再び名前の胸に顔を埋める。
「柔らけー…」
思わず声に出してしまう。そして無意識に手がのび、やわやわと感触を堪能する。
『ちょっ……それは柚子湯の後にしようよ〜』
「ちぇ…分かったよ」
せっかく用意してくれたかぼちゃを食べない訳にはいかないのな、と思い渋々了承する。何故、冬至にかぼちゃを食べるのか…。ん…?そういえば冬至って確か…。
「冬至って、一番昼が短くて、一番夜が長い日だったよな?」
『そうだけど……あっ!!もう…エッチ!!』
「どっちがだ。何も言ってねーだろ」
恥ずかしそうに焦る名前があまりにも可愛くて、結局そのまま重なり合ったのは言うまでもない。念のため言っておくが、その後かぼちゃも柚子湯もちゃんと堪能した。
夜明け前に目覚めると名前が起き上がって窓の外を眺めていた。まだ薄暗い外の僅かな光が白い肌を艶めかしく魅せる。
思わず腕を引き、抱き寄せた。
「勝手に俺から離れるなよな…」
そしてまた、俺だけの甘いぬくもりに酔いしれた。
夜が長い分だけ、堪能してやる。
おわり
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