私の素敵な旦那様
NAME CHANGE
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「名前、ちょっと話せるか?」
『うん』
私は実理に促され、椅子に座った。
「俺な、育休取ることにしてん」
『…は?え?な、なんで…?』
「前から取ろうとは思っててん。でも今朝、名前を抱き締めて決めたんや。こんな小さい身体がもっと小さくなるくらい大変なことを、一人でさす訳にはいかんって」
実理は私の手を取り、そっと握った。大きな手にすっぽりと包まれてしまう。
「ほんで会社行ってすぐ上司に言うたんよ。アホちゃうか、とか言われたらど突いたろ思っとったけど、むしろ男で育休は会社始まって以来のことやから、今後の為にもええことやって言ってくれてん。ほんであまりにも嬉しくて、早よ名前に伝えたくて、半休で帰って来たんや」
ニッと得意げに笑う実理の笑顔は、出会った頃から変わっていない。実理の優しさは、日に日に大きくなっている気がする。
『…ありがとう。嬉しい。正直毎日いっぱいいっぱいやった。ほんでも実理は昼間働いとるし、負担を掛けたく無かった。だから、頼ることもちょっと遠慮しとった所はある』
「俺ら二人の子なんやで?二人ですんのが当たり前やろ。ほんでも、気使ってくれてありがとうな。愛されとんなー、俺!」
『…そういう所、ホンマ好き』
「知っとる」
何故だろう。今なら堂々と実理と見つめ合うことが出来る。やっぱり、言葉にするって凄く大切な事なのかもしれない。
『スーパーの近くにさ、めちゃくちゃお洒落なパン屋さん出来とったで』
「ホンマ?ほな今度行ってみよか。時間はたっぷりあるんやし」
『うん。行こう!三人で』
自然と三人と言っていた。さっきは、子連れで入れないだなんて思っていたのに。実理がいてくれて本当に良かった。結婚したのが実理で本当に良かった。
そう思うと、私の目からはポツポツと涙が溢れ出てきた。
「なっ…!何泣いてんねん!」
『泣く程嬉しかってん』
すると、寝室の方から子どもの泣き声が聞こえてきた。どうやら起きたようだ。
「うお!あっちでも泣いとるやんけ」
実理はスッと立ち上がり、寝室から子どもを連れて来た。ふにゃふにゃと泣いている。きっとお腹が空いたのだろう。
「おーし、泣いとる二人をまとめてこうしたる!」
実理は片腕で子どもを抱き、もう片方の腕で私を抱き寄せた。すると、子どもが私の服をギュッと掴んだ。
「おっ!チビも母ちゃんが好きか!そうやんな〜。いっつも世話してくれるもんなぁ。分かってんねんな〜」
また涙が溢れてくる。
出産しなければ、この幸せを感じることは出来なかったんだよね。
『私、実理がおらんとアカンなぁ』
「アホ。俺もチビも同じやっちゅーねん」
その日の夜、初めて子どもが夜中の授乳をしなくても朝まで寝てくれた。
私の安心が伝わったのかなぁ。
だから私は一度も起きる事なく、一晩中、実理の腕の中で眠った。
子育てがこんなに大変だなんて、想像以上だった。
そしてこんなにも幸せだなんて、もっともっと想像以上だった。
全部、実理が教えてくれた。
もっともっと、色んなことを教えてね。
ううん。一緒に知っていこうね。
身体を起こして見えた二人の寝顔がそっくりで、朝から少し泣いてしまった。
実理には内緒にしておこう。
今日も私の素敵な旦那様と生きていく。
おわり
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