後編
NAME CHANGE
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「そんな格好して走っとったけど…何かあったんか?」
そう問いかけると、名前は泣きながらもゆっくりと話をしてくれた。
『……っ……てことが…あってん……』
「…そうか」
旦那の事は話には聞いていたが、こうして傷付いた名前を目の前にして黙っていられる筈がない。
俺はもう、逃げも隠れもしない。
「俺は今日、名前に少しでも近付きたくて何となくこっちに来たんや。ほんでこの青い光に吸い込まれるように、この広場に来た。そしたら、名前が目の前に現れた。こんなんただの偶然とは思われへん」
『うん…私も、烈がおる方にって思ってここに走って来たんよ』
俺は名前の手を取った。強めに掴んだせいか、名前は驚いたようにこちらを見ている。
「行こう。俺らの事誰も知らん所に。何もかんも捨てて」
『……ホンマに、それでええの?』
「そんなん、とっくに覚悟は出来とる」
『私…もう32歳やで?』
「知っとる」
『烈より先におばちゃんになっていくで?それでも…』
「もう喋んな」
名前の口を塞ぐように、俺は深く深く、何度も角度を変えてキスをした。
名前が10個も年上ということは、生まれた時からずっとそうだった。それでも名前が好きだと、名前を守っていくと、あの夜、決めたんだ。
「少し早いけど、迎えに来たわ。一緒に行こう」
『……ずっと、待っとったで。嬉しい』
もう何も要らない。
大学もバイトも内定も、全部。
ただ、名前が隣りで笑っていればそれで良い。
待ち焦がれた日より少し早いけれど、クリスマスの奇跡を信じて、俺たちはゆっくりと歩き出した。
鼻先はツンと冷えるけれど、繋いだ指先は痛いくらいに熱かった。
名前と創る未来なら、怖いものなんて何もない。
今日が、待ち焦がれたその日。
全ての始まりの日。
おわり
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