休日の始まりはチラシの裏から
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予定のない休日は、寝たいだけ寝る。今日も目が覚めたのは10時くらいで、のそりと身体を起こすと、横にいるはずの人物がいない。
リビングの方から光が漏れる。先に起きたのだとすぐに分かり、ドアを開けた。
「おはようピョン」
『おはよ。いっぱい寝ちゃった…起こしてくれれば良かったのに』
「休みの日は寝たいだけ寝れば良いピョン」
夫の一成と結婚して一年になる。お互い仕事が忙しく、平日に晩御飯を一緒に食べたのは数える程しか無い。だから休日はなるべく一緒に過ごすようにしている。例え家でゴロゴロしているだけだとしても。
一成は珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。新聞は紙で読むのがポリシーらしく、休みの日でもチェックは欠かさない。私も一成が淹れた珈琲をマグカップにたっぷり入れ、隣りに座った。だいぶ時間が経ったのか、すっかり冷え切っていたけれど、豆から淹れた珈琲が冷めたのをグビグビ飲むのが好きな私には好都合だった。
『ん!チラシ見たい』
新聞と一緒に来るチラシに目を通す。今の時期はクリスマスムード一色だった。小さい頃はクリスマスを感じるチラシを見るだけでテンションが上がっていたっけ。ケーキやチキンより時間が欲しい自分は、大人になったんだなと思えた。
表面を見終えたチラシを裏返すと、裏は白紙だった。そこで幼い頃の記憶がふと蘇った。
『小さい頃、裏が白紙のチラシがあるとめちゃくちゃ喜んでたなぁ。お絵描きするから捨てないで!ってお母さんに言ってたっけ』
「ふーん…どんなの描いてたんだピョン?」
『うーん…そういえば、クリスマスの時期は欲しい物とか想像上のパーティーの様子とか描いてたかも』
アハハと笑いながら、再び珈琲をゴクリと飲む。こんな苦い飲み物を砂糖もミルクも入れず何杯でも飲めるようになったのも、いつか
らだったっけ…。そう思って時計を見ると、まだ10時20分だった。
『今から朝ご飯食べたら、お昼微妙だよね』
「俺はさっきパン食べたピョン」
『そっかぁ…じゃあもう少し待ってお昼一緒に食べよっかな』
「それなら、お絵描きするピョン」
『え?』
「このチラシの裏に、欲しい物とか描いてみるピョン」
一成がペンを取り、渡してきた。チラシの裏にお絵描きだなんて何年ぶりだろう。私は欲しい物を少し考え、ペンを走らせた。
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