今更、青春
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
仙道くんをまともに見ることが出来なくなり、ピアノに立て掛けた楽譜に目をやると、その歌詞に私はハッとした。そして、おもむろに鍵盤に指を置き、前奏からまた弾き始める。今度は、伴奏に歌を乗せた。
── ♪
みんな少しずつ大人に変わって行くけど
あの日語った夢はいつまでも色あせることはない
歩いて行く道はきっと違うけれど
同じ空見上げているから
この地球のどこかで
私が突然歌い始めたからか、仙道くんは少し驚いているようだった。
『この歌詞……何だか遠くに行っちゃう仙道くんに向けてるみたいだね』
「遠くったって隣りの県だし、いつでも帰って来れるよ。でも、そう思ってくれるなんて嬉しいなぁ」
仙道くんはにっこり微笑んだ。今は何となく本当に嬉しくて笑っているんだと分かった。すると、仙道くんはいきなり私の手を掴み、自分の掌と合わせるように重ねた。
「名字さんってさぁ、指長いんだね」
突然のことに心臓が飛び出そうになる。あれ?私…何でこんなにドキドキしてるの…?
そこに追い討ちをかけるように、仙道くんの指が私の指の間にかかり、そっと握られた。こ、これは所謂〝恋人つなぎ〟…!私は自分がどんな顔をしているのかさえも分からなくなっていた。
『えっ…ちょっ…仙道…く…ん…あの…』
「俺、名字さんのこともっと知りたくなっちゃった」
繋がれた手が熱い。
想像もしなかったことが起きている。
『わ…私も……仙道くんのこと、もっと知りたい』
勇気を振り絞って言うと、仙道くんはまたニッコリと微笑む。
「仲良くしようね、名字さん」
コンクール当日は仙道くんの為に伴奏をしようと決めた。
春には遠くに行ってしまう彼に向けた、私なりのエールにしよう。
またいつか一緒に、この曲を聴ける日が来るのを夢見て。
中学卒業間近
今更、青春
おわり
あとがき→