ずっと前から決まっていた物語
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの夜から数ヶ月経った。名前とはあれから一度も会っていない。連絡先を交換したものの、バリバリ仕事をしているし、何より旦那がいるため、高校生のノリで用もないのに連絡をする気にはなれなかった。
季節はもう秋になっていた。
南は部活を引退し、受験生として日々を送っていた。特に何かやりたいことがある訳でもなく、それなら大学に行く必要があるのだろうか…と日々悩み、答えを出せずにいた。と言ってもそれ程深刻では無く、大学に行かないならば家の店を継げば良いというくらいの気持ちでいたのだった。
学校が終わり、鞄を置いて制服を脱いだ。今日は予約していたCDを引き取りに行くことになっている。白Tシャツに深い青のカーディガンを羽織り、足首丈の黒いクロップドパンツを合わせ、再び家を出た。
無事CDを購入し最寄駅に着く頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。陽が落ちるのも随分と早くなったものだ。また冬がきて、春になると自分は何をしているのだろう。前に一度だけ、岸本に何故大学に行くのか聞いたことがある。その答えは「キャンパスライフを謳歌するためやん」だった。ある意味、それは正解なのかもしれない。そんなことを考えながら駅沿いの道を歩いていると、駐車スペースにこの辺りではあまり見かけない、けれど南自身の中ではいつかのように通り掛からないかと思っていた、イタリア製の車が停まっていた。そして窓が開き、見知った顔が視界を満たす。
『久しぶり、烈』
「…おう」
促され車に乗ると、服装から見て名前は仕事帰りのようだった。白いブラウスがよく似合っている。名前は車を停めたまま、話し始めた。
『元気にしとった?』
「ぼちぼち」
『ふふっ…やっぱ可愛くない』
名前は以前より少し痩せ、何だか酷く疲れている様子だった。やはり家族と上手くいっていないのだろうか。そう思うと〝今日は何でこっちに来たのか〟とは聞けなかった。
.
1/6ページ