Another Story:また一つ
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「もっと膝使って!力まんと!」
『…えいっ!』
シュッと切れの良い音と共に、ボールが秋の少し冷たくて軽い空気を切っていく。
そして、スパッ!と気持ちの良い音がした。
『うわ…!入った!入ったよ実理!』
「どーや、気持ちええもんやろ?」
『うん!楽しいっ!』
初めてのゴールに私は興奮を隠し切れなかった。一方、実理は何かを噛み締めるかのように少し黙ったままだった。
『実理、どうしたの?』
「いや…何ちゅーか……自分の好きな事を好きな人と分かち合えるってええもんやなぁ思てな」
好きな事を好きな人と分かち合える…その言葉を聞いて、急にこれまでの出来事を思い出した。
二人で朝ピクニックに行き並んでサンドイッチを食べたこと。
夜に地べたを裸足で歩いたこと。
皆でたこ焼きパーティーをしたこと。
全部、私の好きな事だ。そしてその思い出には実理がいる。
『ふふっ…そんなの百万年前から知ってたよ〜だ!』
「おまえは何歳やねん。妖怪か!」
クシャッとした実理の笑顔が大好き。
実理といると、自然体でいられる。
これからも、二人の好きな事をもっと増やしていけたら良いな…。
そう思うと私も顔の筋肉が緩んでしまう。
「寒なってきたな。そろそろ帰ろか」
『うん』
遠くで鴉が鳴き、太陽が眠る準備を始めていた。
夕陽が創る私たちの影は、凸凹していて何だか愛おしい。
また好きな事が一つ増えちゃったなぁ。
帰り道で手を繋いだのは、寒いからじゃないからね。
おわり
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