15:時々は、ヒールで。
NAME CHANGE
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
外の空気は冷んやりとしていて、冬の気配を感じる。お酒で火照った身体には心地良いくらいだった。
街の明かりが、雰囲気を作り出す。
『岸本さん、今日は本当にありがとう。こんなに豪華で楽しいタコパ初めてだよ』
改めてお礼を言うと、岸本さんは少し照れくさそうにし、フェンスに肘を掛けた。
「今日の名字さん、ごっつ綺麗や。こない綺麗やのに変な男とおるの、やっぱ勿体ないで」
『…うん。そうだよね。本当にそう思う。私らしくいれる人と一緒にいた方が、絶対良いよね』
私も岸本さんの隣りに行き、フェンスに手を添えた。
『私ね、部屋はちょっと散らかってるくらいで良いの。ホントはパステルカラーより派手な柄の服なんかも着てみたい。歩き易いスニーカーでズンズン歩きたい。ライブハウスとかに行って、ロックに溺れてみたい。でも、たまにこうやってすっごくお洒落して、パーティーしたい。そうやって、生きていきたい』
私がそう言うと、岸本さんは私の両方を持ち、向き合う形になった。岸本さんの目がいつも以上に真剣で、絶対に目を逸らしちゃダメだと思った。
「…それ、俺のめちゃくちゃどストライクな女やわ。それでいて気が利いて、自分を押し殺してでも変わろうとする努力も惜しまない根性の持ち主…もうこんな人、他におらんと思うねん」
岸本さんの真っ直ぐな視線が私を貫く。そのままの自分を曝け出せなかった弱い私のことを、そんな風に思っていただなんて…。
「俺は好きな人のためなら命張れる。そんくらい本気で幸せにしたる。もうお前しかおらん。名字さん、これからは俺と一緒におってくれ」
『うん。私なんかで良ければ』
そう言うと、岸本さんは真剣な目つきを止め、フッと笑った。
「俺の彼女やぞ?〝私なんか〟なんて言うたらアカン」
『そうだよね。こんな素敵な人の彼女だもん。堂々としなきゃ!』
私がそう言うと、岸本さんの腕が腰に回り、優しく引き寄せられて抱き締められた。
「…寒ないか?」
『うん。ふふっ…くっつきたいだけでしょ?』
「…そこはかっこつけさせてや」
『もう、充分かっこ良いよ』
今度は肩から包み込むように抱きしめられる。そして見つめ合い、ゆっくりと近付きながら私たちは唇を重ねた。
豪華な食事も、派手に着飾ることも要らない。
凝った味付けも、お洒落な盛り付けも要らない。
ミスや不安も、たこ焼きに入れて食べてしまおう。
一緒に笑っていられたら、それがスパイスになるから。
これからは、私らしく生きていく。
岸本さんと。
たまにヒールを履いてかかとが痛くなるくらいが、私たちらしいよね。
だから、一緒に色んな所に行きたいの。
時々は、ヒールで。
おわり