14:自分の為のハイヒール
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おまけ
名字さんと番長が厨房に行き、俺と南だけになった。さっきは「語るで!」なんて言っていたが、実際、俺と南が語ることなんて早々無い。何だか少し気まずくなり、アホの土屋をネタに話を切り出そうとした時、珍しく南の方が先に話を始めた。
「名字さん、今日めっちゃ綺麗やな」
「え…?!お、おう!そうやな!」
南の口からそんな言葉が出てくるとは思わず、何だか調子が狂う。
「女って怖いな。化粧や服でホンマに化けよる。あれじゃ周りが放っとかんわ」
「…そうやな」
南の言う通り、今日の名字さんは本当に綺麗だ。何と言うか、凄く前向きで、新しい一歩を踏み出したような〝内面からくる美しさ〟という感じだ。普段こういうことを言わない南が言うくらいなのだから、相当なもんだ。何故か俺は、自分のことのように誇らしかった。
「アレやな、名字さんがたこ焼きで、お前がソースってトコか」
「は?」
あの夜、俺は名字さんがたこ焼きみたいだと思ったのは記憶に新しい。南は名字さんに起きた事をどこまで知っているのだろうか。もしかして、名字さんが番長に話し、そこから聞いたのか…?
言葉を返せずにいると、南は皿からたこ焼きを一つ取り、ソースをかけた。
「たこ焼きはこのまんま食うても、ソコソコ美味い。けど、ソースがかかったら抜群に美味くなる。さっきまでが嘘みたいにテッカテカに光って見えるやろ?つまり、そういうことや」
「俺が名字さんを、綺麗にしたっちゅー事…?」
「いや、そうやない。お前と名字さんが揃うと、彼女の魅力的が惹き出されるっちゅーことや。ホンマの魅力が。それは何でか言うたら…後は言わんでも分かるやろ?ちゅーか、分かれ」
南がこんな話を真顔でするのは、きっと酒の力が大きい。でもそれは紛れもなく南の本心だ。南なりの励ましなのだろう。
「南」
「あ?何や」
「番長にチクるぞ、名字さんを綺麗や言うた事」
「…好きにせえ」
南がプイッとそっぽ向くと、タイミング良く名字さんと番長が戻ってきた。
「二人で何語り合っとったん?」
番長が側に来た途端、南の表情は優しくなる。お前らも、立派なたこ焼きカップルやんけ。
名字さんが持ってきた皿には、まんまるのたこ焼きがホカホカと湯気を立てて並んでいる。
「おっ!何やコレ!めっちゃデカない?俺、コレにするっ!」
俺はソースをかけずに頬張った。
南は知らないかもしれないが、ソースなんてかけなくてもそのまんまで充分魅力的だと俺は知っているから。
そのたこ焼きは、噛んだ途端にガリッと予想外の音がした。
また新たな一面を魅せられたようだった。
続く