14:自分の為のハイヒール
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岸本さんがいなくなったのを確認すると、南さんがビールをこちらに向けた。私は『すみません』とグラスを傾ける。南さんが注いでくれたビールは泡のバランスが抜群で、器用なんだなと思った。ビールを一口飲むと、南さんが静かに口を開いた。
「アイツは昔から正義感が強くて、人のことでも自分のことみたいに心配する奴やった。でもその分、自分のことを差し置いてしまうことがあんねん。突っ走って、周りが見えなくなることもようある」
何を言うかと思えば、岸本さんの話を始めた。黙って聞いていると、次は番長さんが話し始めた。
「そうやね。もしこれから先そうなった時、名字さんが軌道修正してくれたら、きっと素敵なカップルになれるんちゃうかなぁ」
南さんは番長さんを優しい目で見つめ、フッと笑みを溢した。そして一口ビールを飲み、今度は私の方を見た。
「アイツがこないに誰かを想うの、初めて見たわ。名字さん、アイツのことどうか頼んます。ホンマ、アホやけどええ奴やから」
南さんが、岸本さんのことも番長さんと同じように大切に思っていることがよく分かった。私は自分のことのように嬉しかった。
『私で良ければ…!』
そう言うと、南さんはニッと歯を見せてクシャッと笑った。いつもクールな南さんの新たな一面を見てしまった。岸本さんの周りは、本当に魅力的な人ばかりだ。何だか嬉しくなり、ビールが進む。
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