13:臙脂色のスターリーソックス
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そして改めて名字さんを落ち着いて見ると、さっき突き飛ばされた時に打ったのか膝と肘の辺りが赤くなっていることに気が付いた。
「名字さん…めっちゃ赤くなっとるけど、ホンマに大丈夫なん…?痛ないか?」
名字さんは俺に言われて初めて気が付いたようで、自らの身体を見てギョッとしていた。
『うわ…ホントだ…。これ、青タンになっちゃうかもねぇ…』
「…そうやなぁ」
『でも、さ…』
「ん?」
『ひざっこぞうに青タンつけて歩いてるくらいが、私らしい気がするの。背伸びしてない、本当の私』
そう言って笑う名字さんの笑顔は、今まで見たものの中でもとびきり可愛くて、とびきり輝いて見えた。
あ…ヤバい…。
胸がギューッと締め付けられる。
喉の奥が熱いような、
鼻がツンとするような、
この感覚……久しぶりだ。
この感じを世の人が何と呼ぶかは、言わなくても分かるだろう。ふわふわと身体が浮くそうな、でも少し違うと重く沈んでしまいそうな…そんな感覚に浸っていると、名字さんが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
『岸本さん、大丈夫?』
「へっ?あっ…お、おう!」
『ふふっ…そっか。あ!そうだ、ひとつお願いがあるの』
「何や?何でも言うてみ」
『私、また岸本さんのたこ焼きが食べたい』
予想もしなかったお願いだった。そして、凄く嬉しいお願いだった。俺は思わずニヤけてしまう。
「おう!任しとき!今度は腹壊すくらい食わしたるわ」
『うん。楽しみにしてるね』
青タンがあっても、ちょっとくらいの擦り傷があっても構わない。
名字さんのふわふわとした優しさ、真面目さ、可愛らしさを俺は知っている。
外はカリッと焦げ、中はふわっと柔らかい。
まさに、たこ焼きみたいだと思った。
一番ど真ん中にそっと包まれているタコに辿り着ける日を想像してみる。
何か通じたのだろうか。
図ったように俺たちは吹き出し、笑い合ったのだった。
続く