13:臙脂色のスターリーソックス
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名字さんが俺の腕の中で泣いている。我慢しながらも、彼氏との関係を何とか修復しようと頑張ってきた。そんな彼女の気持ちも知らず、絵に描いたようなクズっぷりを曝け出してあの男は出て行った。最後まで謝らなかったあの男を、俺は許さない。そして、何があっても名字さんを守っていこうと決めた。
暫く抱き合っていると、名字さんは落ち着いたようで、泣き腫れた目で俺の方を見上げた。この泣き顔を見るのも、もう何度目になるのだろう。
『…ごめんね』
「ええって。少しは落ち着いたか?」
『うん。あの…岸本さん……本当にありがとう。さっきの…すっごく嬉しかった…』
「名字さんはなぁ、優しくて細かいことにもよう気ぃ付くし、好きな奴のために無理してデートにヒール履いたりすんねんぞ?俺は正直、めちゃくちゃ可愛いと思う。そんな健気な気持ちも知らんと、家政婦みたいな扱いすんのは、度が過ぎるんとちゃう?」
「あれは、俺の本心や。今までずっと思ってきたことを、そのままぶつけただけや」
正直、もう俺が名字さんを好きだということは本人にも気付かれていると思う。じゃあこのまま関係を始めるかと言われれば、それはやっぱり違う。俺は男だ。きっちりとケジメはつけなければならない。そして何より、名字さんを不安にさせたくない。そう思っていた。
「名字さん」
『は、はいっ…!』
突然呼ばれたためか、名字さんは驚いたようで肩をビクンと上げて返事をした。
「俺の気持ち、ちゃんと伝えたいねんけど、今ここで言うのも何やし…改めて言う時間くれへんかな」
真剣に言った。たぶん今、俺は険しいくらいの顔をしているかもしれない。そんな俺を見て名字さんは、柔らかく微笑み小さく頷いた。
『分かった。私も今は気持ちの整理がつかないから…』
ようやく俺たちは冷静になれた気がする。ベランダを通った時にサンダルが脱げ、靴下のまま歩いてしまったのか、小さな砂のザラザラした感覚を急に足の裏に感じる。臙脂色のソックスに星が散りばめられているように見えた。
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