12:インステップ
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すると突然、気が緩んだのかボロボロと大粒の涙が頬を伝う。
彼が他に相手がいることも、頭の片隅では思い描いていた。
それでも、一度は本気で好きになった人だから…信じたかった。
仕事で忙しいだけ、と思えばそれで良かった。
いつかまた、「美味しい」とご飯を食べてくれる日を夢見ていた。
でも、全部違った。
私、何してたんだろう……。
『…悔しい……っ……うぅ……』
思わず声に出すと、岸本さんがふわりと私を包み込むように抱き締めてくれた。大きくて、温かくて、優しさで溢れている。そう感じると私は岸本さんの胸にしがみ付き、子どもみたいに大きな声を出しながら泣いてしまった。
涙が岸本さんの服に染み込んでゆく。
一粒の涙が描いた水玉模様は、次々とくっついてどんどん大きくなっていく。
小さな点がいつの間にか増え、やがて大きな物へと変わってゆく。
私と彼の関係を表しているようで、虚しかった。
そして、それらを全身で吸収してくれようとする岸本さんの優しさに、今日だけは甘えてしまいたい。
一粒だけ、岸本さんの足の甲に涙が落ちるのが見えた。あっという間にジワーッと滲んで見えなくなってしまう。
私も、岸本さんに吸い込まれてしまいたい。
そう思い、しがみ付く力をギュッと強めた。
続く