12:インステップ
NAME CHANGE
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「ハァ…名字さん、こんな最低な奴に時間と労力使うの、ホンマ勿体ないで」
岸本さんが沈黙を破り、少しも動かない彼氏の横にしゃがみ込んだ。
「名字さんはなぁ、優しくて細かいことにもよう気ぃ付くし、好きな奴のために無理してデートにヒール履いたりすんねんぞ?俺は正直、めちゃくちゃ可愛いと思う。そんな健気な気持ちも知らんと、家政婦みたいな扱いすんのは、度が過ぎるんとちゃう?」
岸本さんの言葉に、彼氏は表情一つ変えず一点を見つめたままだった。私は、岸本さんがそんな風に思ってくれていたことが嬉しくて、涙が出そうなのをグッと堪えていた。
「お前……ここから出て行け」
「…!!」
予想もしなかった言葉に、彼氏は岸本さんの方を見た。
「大家として、ここに住むことは認められへん」
「…っ…そんなの…お前に出来んのかよっ…!」
「マンションで迷惑行為があったって、お前の会社に通達すんで。契約書ちゃんと読んだんか?同意して入居しとるやんな?」
きっと、彼氏は契約書の内容を全て把握出来ていない。そもそも契約書に記載が無くても、集合住宅での迷惑行為は常識的に考えても許されることではない。ただ、私とのイザコザが迷惑行為に該当するのかはよく分からないけれど…。
でも、岸本さんは私を助けてくれようと必死なことが痛いくらいに伝わった。
「今すぐ自分の荷物まとめて、その女の所に行け。ソイツとセックスしまくってろや、ボケ!!」
岸本さんが強い口調で彼氏に言った。彼氏は最早何も言い返せないだろう。悔しそうに唇を噛みながら立ち上がったと思うと、クローゼットを勢い良く開け、ザッと自分の荷物を大きなキャリーケースに詰め込み始めた。そして、チッと舌打ちをしながら岸本さんを睨みつけた後、私の方を見た。
「じゃあな」
そう一言だけ言うと、あっという間に部屋を出て行ってしまった。バンッとドアを閉めた音が、胸に痞えていた物をグッと押し出すようにビリビリと私の身体を震わせた。
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