09:無意識にオレンジのサンダル
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そして気付けば私は玄関のドアを開け、外に出ていて、妙なことに彼氏がちょうど帰ってきたようでこちらに向かって歩いて来る。
「ど、どうしたんだよ…顔、真っ青だぞ…?」
流石に私の様子がおかしいと察したのか、彼は凄く動揺していた。今自分がどんな顔をしているのか分からないが、心の中では冷静に客観的に彼を見ることが出来ていた。
『……もう、訳分かんなくなっちゃった…』
「え…?」
『トマトクリームのパスタも、丁寧につけたボタンも…全部あなたの為に頑張ったけど……それは家事の一環ってことだったみたいだね』
「ちょ……何言って…」
『私は……家政婦じゃないよ…』
私は俯き、小さく消えるように言った。暫く沈黙が続く。
もうこのまま何も言わず、流されて終わってしまうのだろうか。それならもういっそ、出て行ってしまおう…そう思い、一歩足を前に出した瞬間だった。
彼が私の腕を引き、強く抱き締めたのだ。
私は驚きのあまり、立ち尽くしてしまう。
「ごめん……そんな風に思ってたなんて知らなかった」
久しぶりにこんなに近くで囁くような声を聞いたような気がする。
久しぶりに彼の腕の中にいる。
久しぶりの彼のにおい。
ダメだ、本当に何も考えられなくなってきた…そう思った途端に、彼の低く甘い声が私の鼓膜を揺らす。
「…俺には、お前が必要なんだよ」
こんな言葉を彼に言われたのは、初めてだった。そして、ずっと聞きたかった言葉だった。
なのに、岸本さんのことが頭をよぎった。
あれ…?私……。
気付けば彼に手を引かれ、玄関のドアを再び通っていた。その時、初めて私は自分がいつものオレンジのサンダルを履いていたことに気が付いた。
そして、気が付かなかったこともあった。
岸本さんに、この場面を見られていただなんて──。
続く