09:無意識にオレンジのサンダル
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岸本さんと公園でたこ焼きを食べた日から、私の中で何かが変わろうとしていた。
「………ホンマに今の彼氏とおって、名字さんが幸せなんか、心配になる」
「俺なら、毎日笑かしたる。俺なら、そんな顔させへん」
やっぱり、彼氏と私の今の関係は普通じゃない。そして、岸本さんが少なからず自分を心配してくれていると分かっているだけで、凄く心強かった。
私は、改めて彼氏と付き合う前のことを思い返してみた。
あの頃は周りが関西の人たちばかりの中で、関東出身の彼がいてくれるだけで何となく安心していた。言葉も文化も慣れない私に共感してくれた。時々、地元の話なんかもした。そして気付けば恋心が芽生え、彼に好かれることだけを考えるようになっていった。
どうにかして彼の好みを聞き出すと、〝料理やお裁縫が得意な女の子っぽい子が好き〟と言っていた。私は料理はともかく、お裁縫は苦手だった。それでも何度も練習し、ある程度のことはできるようになった。必死に頑張って、彼の好みの女の子になるよう努力した。
やっとの思いで付き合い始め、あっという間に同棲することになった。今思えば、その辺りから自分がしてきたことは家事だけだったような…?
あれ?もしかして、ずっと私は家政婦扱いだった…?
あの努力は何だったの?
何だろう…凄く……
ばかばかしい……。
そう思った途端、急に全てが嘘で塗り固められているような気がした。このソファーも、テーブルも、マグカップも全部、体良く私を使う為に用意された物なのかもしれない。視界に入るこの部屋の全てに恐怖を感じた。
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