08:ブラウンのショートブーツ
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昨日はたこ焼きの材料を用意し、たこ焼き機を引っ張り出してきた。そして今朝は早起きして、ひたすらたこ焼きを焼いた。
あの日から、番長に言われた言葉が頭から離れない。
「岸本くん、好きなら振り向かせたらええやん。岸本くんの為にも、名字さんの為にも」
名字さんの為に俺ができること…それは心から楽しいと思わせることだ。彼氏にいつも気を使ってばかりで、楽しいと感じられていないのではないかと思った。
この前のピクニックでは、楽しそうに笑っていたのをよく覚えている。そして俺自身も凄く楽しかった。だから、今度は俺が美味いモンを作って、名字さんに楽しんで貰うんだ。
俺はせっせとたこ焼きを焼き、容器いっぱいに詰め込んだ。
そして11時
少し早めに待っていると、ドアから出てきた名字さんはやっぱり少し元気が無さそうだった。その悲壮な感じがまた俺の心を締め付ける。そして皮肉にも名字さんが綺麗に見えてしまうのが哀しい。
今日の服装も可愛らしいな…なんて考えながら、俺は名字さんと公園に向かった。
公園に着き、早速名字さんにたこ焼きを食べて貰った。少しでも喜んでくれれば、それで良かった。しかし、喜ぶどころか彼女の目からはボロボロと涙が溢れてきたのだった。
『……グスッ……何コレぇ……美味し過ぎ…っ…』
それを見た瞬間、俺は名字さんの手を握っていた。
「………ホンマに今の彼氏とおって、名字さんが幸せなんか、心配になる」
『えっ…?』
「俺なら、毎日笑かしたる。俺なら、そんな顔させへん」
今度は指を絡めるように、手を握る。小さくて細くて折れてしまいそうだ。名字さんは暫く驚いたようにしていたが、繋いだ手を見つめながらようやく言葉を発した。
『ゴメン…たこ焼きから岸本さんの優しさがいっぱい伝わってきちゃって…なんか分からないけど、涙が出てきちゃった。あれ?てことは、結果的に私を泣かせたのは岸本さんなんじゃ…?』
「なっ…!た、確かにそうやな…」
何が〝そんな顔させへん〟だ。やっぱりこういうキザなことは俺には向いていないのかもしれない。ずーんとヘコんでいると、名字さんが握っていた手に力を込め、ギュッと握り返してきた。
『凄く嬉しい。私の為に、ありがとう』
少し頬を染め、俯きがちにお礼を言う名字さんは本当に可愛くて、俺の心臓はついにドクドクと動きを速めていった。
俺、やっぱり名字さんが好きだ。
握った手に当たる、彼女の指にはめられた指輪の感覚が何だか切なかった。
続く