08:ブラウンのショートブーツ
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怒りに震えたあの日から、私は彼の前で携帯を見るのを止めた。番長さんからのメッセージ以外のことも一切だ。
私が何をしているだとか、そういうのに関心が無いとばかり思っていた。関心があるのは良いことなのだが、今回の場合、〝私が楽しそうにしていることを、良く思っていない〟ということになる。それは決して嬉しい事では無い。
毎日起きて仕事に行き、一人で晩ご飯を食べ、大きなベッドの端に眠っていると、深夜には反対の端に彼が入り、ちゃんと帰って来ていることを確かめる日々…。
これからずっと、一生こうなのだろうか。
まともに会話もせず、身体に触れられる事もなく…。
やっぱりもう、無理なのだろうか…。恋愛経験の少ない私は、別れる時にどうしたら良いのかさえ分かっていない。仮に別れたとして、流石に一人の給料でこのマンションに住み続けるのは無理だ。そうなると、もう岸本さんとの関わりが無くなってしまう。番長さんも、南さんも。
せっかく仲良くなれたのに…。
私はこんなことを考えながら、電車に揺られ家に帰っていた。電車を降り、携帯のマナーモードを解除する時に不在着信があることに気付いた。
〝岸本さん〟
と表示されている。私は慌てて電話をかけ直した。
「もしもし?」
『あっ、もしもし?すみません。電車に乗ってて出られなくて…』
「構へん、構へん。あ、ほんで用件なんやけど……今度の休み、空いてへん?この前シャツのボタンつけて貰ったやろ?あれのお礼がしたいねん」
『そ、そんな!あんなのお礼されるようなことじゃ……』
「いやいや!それじゃ俺の気が済まんわ。11時にドアの外な」
本当に大したことをしていないのに、お礼なんて受けられない。……けれど、あの部屋の中にいると息が詰まりそうになる。
『じゃあ…お言葉に甘えて』
「おっしゃ!!ほな、日曜日に!」
日曜日か。何着て行こうかな。
楽しみだな。
岸本さんがくれる温かい光が、私の心をぽかぽかと温めてくれる。
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